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作品名:DEV 作者:Miami3

第21回   21
窓から外をちょっとだけ顏を出して窺う。下ではテクスス兵士に混じって指を指してどこを攻めろとルイスが必死に指示している。これであの時わざわざ張っていた理由もハッキリした。どこに滞在しているか喋ってしまってジョーには悪いなとは思いながらもここはどうやって切り抜けるかの方が重要だ。こっちも指示を仰ぐため後ろのボスを振り返った。
「怪我人を奥の部屋に運ぶ。あいつが裏切った時点で抜け穴はもうダメだ。別のルートを使うぞ」
バリゲードの2人だけを残して残りは奥の部屋に退避した。うめき声が聞こえてくると確かにここは戦場のそれと変わらない。こいつらをそのまま残していく気は無いが全員を運び出すのはかなりの困難が予想される。
「ボスどうするつもりですか」
「待ってろ・・・・・・すぐ別ルートが開ける。頭を下げろ」
どうして頭を下げてればこの状況が解決するんだ、と怒鳴り返そうとしたとき、無理矢理手で床に頭を押さえつけられた。そしてその刹那、爆発音と衝撃が頭上を駆けて行った。しっかりと閉められていたドアが爆発で大きく歪んだ。まさか外から小型爆弾でも投げ込まれたのか?残った2人はどうなったんだ?そう考えるとじっとしていられなくて、相当な力でボスを突き放し起き上がる。だが、これほどの事態に関わらずボスの顔に焦りはない。暗い顔をしてはいるが正気を失ったような顔も言動も取らない。何かを悟っていた。嫌な予感がしたブライアントは歪んで開きづらくなっているドアを蹴破ると煙に包まれた室内を呆然として見渡した。
敵はバリゲードを破って大量に侵入していた。いや、わざと引き入れたのかもしれない。残った2人が自分たちの命を犠牲にして自爆したのだから。
この2人を除いても少なくとも体の一部でも原型を留めていた死体が8人いた。先頭で突っ込んできた恩知らずのルイスの下半身が目の前に転がっているのを見て思わずブライアントは唾を吐きかけて足を蹴り飛ばした。力を失ったマリオネットよろしくブンと吹き飛ぶ。外に残っていたであろう残兵も全員が死んでしまったと考えたのかもう誰もいない。
「・・・・・・分かっていたのですか?」
震える声で確認する。尋ねなくてもさっきの態度で合点はいっている。
「そうだ。あいつらは最初からこうなった場合に備えて俺が直々に指示を下していた」
「・・・・2人を犠牲にしたうえで開けた道ってことですか?」
責めても仕方がない。彼がイカレタ殺人鬼でもなければ冷酷な悪漢なわけでもない。強いて言い訳するならこれが戦争というものだ。だが、責めずにはいられなかった。そうでなければ誰にこの怒りと悲しみをぶつければいいんだ?
「すまん」
「俺が、俺が来なければこうはならなかったんですかね?」
ポツンと心に浮かんだことがそのまま口を吐いた。俺が来なければルイスは行動を起こそうとはしなかったはずだ。
「それは違う、お前が来なくてもあいつは早晩作戦を実行したはずだ。お前の責任じゃない」
責任を自分に押し付けることすら許されない。それが何より辛かった。奥から続々とみんなが続いて出てきた。そして言葉を失った。
「すまない、この惨事の全責任は私にある。それは分かっている。だが今その議論をしている時ではない。拠点をこうゆう形で失った以上我々は進まなければならない。本国へ帰還するかしないかは現時点を以て諸君らの自由意思に委ねる。帰っても誰も責めやしない。ただ、残ってくれるものがいるならこれまで以上の協力を頼みたい。最後の指令が先ほど下った」
ボスが周囲を見回しても誰も立ち去るものはいない。混乱しているから何も考えられないわけじゃない。きっと数日後に熟考してから再度聞いても同じ答えが返ってくるはずだ。
「諸君らの遂行意志の高さに敬意を表する。これまで以上の忠誠を我が国とその国民に誓ってくれ。出発は40分後だ。準備をするものが総て吹き飛んだが各々準備してくれ。それとブライアント、向う来てくれ、話がある」
悲しみに浸る暇は無い。気を引き締めてブライアントは特別な話に臨む。ボスは一体俺に何を求めているんだ?医療台に上に座る様に促されると正面にボスが立つ。
「外でのみんなとの話は聞いた。そのジョーとかいう男、信用できるかどうか分からない。これから我々が最後のミッションを遂行するにあたって出来るだけ不確定要素は排除したい。そこでだ、その男の監視を頼みたい。計画を探り協力を装い我々に害するようなら特別措置も検討しろ」
要するに邪魔になるなら殺せとボスは言っている。ブライアントの答えは1つだ。
「Yes sir」


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