「まぁ言いたいことも色々あるだろうけど取りあえず一息つかせてくれ」 窓から空き巣が侵入するように入って来たジョーは勧められてもいないのに勝手に椅子に座り、グラスにウィスキーを注いであおる。そのあまりの貫禄に責めることも出来ずにただただ呆然とするしかない真はジョーが飲み終わるのを待つしかなかった。 「どうゆうつもりだ?ていうかどうやってここに?」 ふーっと一気にウィスキーを飲み干したジョーにようやく真が質問した。ジョーはあぁと言いながらグラスを机の上に戻す。 「うん、あのガキから結構聞いてるとは思うけどな、俺はてっきりお前が俺のところに差し向けた連絡係か何かだと思ったんだ。だけど詳しく聞いたら相当根性入っていて無理矢理俺の泊まってる所を探しに来たって言うんだよ。それでちょっと話を聞いて閃いたことがあったんだ」 「何だよ?そんな大したことあったか?」 ただのガキの妄想だろ、そんなのにどうして本気になるんだ? 「ブライアントから聞いたけど、今テクススは南部と交戦中なんだろ?ところが国内でも派閥争いで戦争に対して一枚岩になり切れていないところがある。クロフォードたち主戦派はこの状況を打開しようとテクスス一由緒正しいマクレモア一家と婚姻関係を結んでその威光を借りて反戦派を黙らせようっていう魂胆だろ?その結婚に必要なのが向うのボンボンのお坊ちゃんと、こっちのじゃじゃ馬のミラーノってわけだ」 「その通りだけどそれが何だよ?俺たちの計画とは殆ど関係ないだろ。だって俺たちはブライアントの助けを借りて南部に向かってそれから先元の世界に帰る手がかりを探すんだ」 ジョーはチッチッチと人差し指を左右に振ってもったいぶった調子で解説した。 「確かに俺たちの計画はそうだ。だけど考えてもみろ、もしこのまま結婚が成立したら、俺たちのいる南部に向かって全軍が侵攻してくるってことだぞ。そんな状況でどうやったら落ち着いて捜索できるんだ?」 「あ」 そう言われればそうだ。だからわざわざロイに味方するようなふりをして成婚しないようにしてたのか? 「お前、そこまで見越して・・・・」 バカだとは思ってはいないが、まさかここまで頭が回る奴だとは思っていなかった。感心したと正直に言いたくはないが少なくともジョーを見る目がかなり変わったことは確かだ。 「まぁぶっちゃければそうなればいいなくらいのものだ。仮に結婚が成立しなくてもクロフォードなら国を1つにまとめ上げるくらいの実力派ある。だがそれが僅かにでも遅れるのならそっちの方がいいって話さ」 「まずロイをその気にさせてそれからミラーノを落とすか・・・・難しいな」 「難しい?何が?」 「いや、だからロイの性格的にミラーノの尻に完全に敷かれてるからな。もし本気で嫌がられたらどうなるか分からない」 「あぁ、その話か。大丈夫だ。俺にも勝算があってあいつを引き込むことにしたんだ。何とかなるだろう。それに何とかできないなら俺が何とかするしかないしな」 「何とかってどうするんだよ?お前は死人なんだぞ」 「そりゃもう、誘拐してでも結婚を阻止してやるよ。楽勝だよ、バカガキ1人」 やっぱり感心できる人間じゃないと真は確信した。
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