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作品名:北の嵐山物語 〜皐月〜 作者:森野 鯨

第4回   4
「へぇ〜 面白い授業だな」

トシさんはそう言ってコーヒーをすすめてくれた

「で、何かネタはないかってか?」

「まぁ それもそうなんですけど…」

トシさんは本立てから地図帳を取り出し、北海道のページを拡げた

「北海道の開拓は、誰がはじめた?」

「屯田兵でしょ」

「そうだな、みんなそう言うよな」

「違うんですか?」

「未開の地を拓くには、まず何が必要だ?」

「え? …道 ですか?」

「そう、その通り 道路だ」

僕はちょっと自慢げな顔になったかもしれない

「明治19年、今からちょうど130年前だな、今の三笠から忠別太

 つまり旭川までのおよそ90キロがたった3ヵ月で作られた」

「3ヵ月?」

「そう、道具も機械もない時代にだ、そこに屯田兵を投入、その5年後」

「明治…24年、125年前」

「そうだ、今度は旭川から網走の道路を1年で作らせた」

「たった1年で?」

「それがこの道路、旭川から上川、層雲峡じゃなく上に上がって北見峠、白滝、丸瀬布、 
 遠軽、そして留辺蘂に下がり北見を通って網走につながる道だ、今じゃ高規格道路がで

 きたから北見峠を通る人はほとんどいないだろうけどな」

「この距離を、1年で…」

「で、これらの道路を作ったのは?」

「屯田兵じゃないんですよね、アイヌの人たち?」

「アイヌ人労働力を活用しようという案はあった、でも酷い扱いを受け続けたアイヌの人

 たちの人口は激減していた」

「じゃぁ?」

「囚人さ」

「囚人?」

「受刑者を北海道に島流しして働かせれば、本州の負担と危険が取り除かれるってな」

「へー」

「明治12年、伊藤博文の発案だった」

「あの伊藤博文?」

「そう、それで北海道に集治監、今で言う刑務所が作られた、北海道に送られた囚人たち

 は、石炭や硫黄を掘ったり、道路や橋を作るために働かされたのさ」

「そうだったんだ」

「囚人だから、過酷な労働で死んだとしても、費用の節約になるって考えていたそうだ」

こんなこと学校で習ったことがなかった…


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