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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第9回   9
そういえば 明日はバレンタインデーか

しばらく そんな日も関係なく過ごしてきた

でも 売り場には若い子だけじゃなく

アラフォーの同年代も結構いる

やっぱり あげた方がいいのかな

トシ 喜ぶのかな

可愛らしいハート型のチョコなんて

私らしくないわよね



散々迷った挙句 

思い切ってちょっと高めのチョコを買った



家に戻ると また工房へと続く足跡があった

こないだ見た足跡

買い物袋を持ったまま

玄関に入らず 工房へと進もうとしたとき

「美咲」

後ろから聞き覚えのある声がした

「永一!」

17年前に 別れた男

「久しぶりだな」

「な、なんの用!」

「元気そうだな」

「なによいきなり、あなたとはもう何の関係もないわ」

「そんなことないだろ、一度は愛し合った仲だ」

「冗談じゃないわよ!帰って!」

「息子はもう高校生か」

「ちょっといい加減にして!警察呼ぶわよ!」

「おいおい、何もしてないのにか」

「二度と来ないで!」

「オレさ、ガンらしいんだ」

「え?」

「長くないらしい」

「天罰ね、いい気味よ」

「相変わらずだな」

「さよなら!」

私は家に入ろうとした

「息子に会わせてくれないか?」

「だから、もう関係ない!」

「オレの子だろ?」

「何が目的?」

「ただ 死ぬ前にひと目会いたいだけさ

 オレにはもう帰るところもない」

「何を企んでいるの?奥さんがいるじゃない?」

「死んだよ」

「娘は?娘もいるって言ってたわよね」

「さぁな、知らん」

「どこまでもテキトーなオトコね!

 いい!二度と現れないで!現れたらストーカーで訴えるから」

私は家に入り玄関の鍵を閉めた

最悪!最低!

どうして 今になって…


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