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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第8回   8
橋の歩道は きれいに除雪されていた

「アリーナ? それとも地場産?」

駅裏の川を跨ぐ橋は この街で一番新しい橋だ

橋を渡ると 冬はスケート場になる大雪アリーナと

道の駅にもなっている地場産業振興センターがある

「ブブー! 天樹くんの将来の職場になるところかも」

「え? あ!博物館?」

「ピンポーン!こないだ研二さんから借りた本を書いたのは

 博物館の館長さんなんだって」

博物館は アリーナの手前のクリスタルホールに併設されている

実は 一度も行ったことがなかった

何年か前に リニューアルしたとかって…

でもこないだまで重徳さんって呼んでたはずなのに

研二さんだって…やっぱり…

「どうかした?」

「いえ…そ、そうだ 昨日、どうしてトワさん」

「福神漬けを買ってきたかって?」

「あ、いや…」

僕はなんて女々しいオトコなんだ

「帰る支度してたら、天樹くんとカレーを食べるから

 福神漬けを買ってきてほしいって電話が来て」

「で?」

「うん、ついでに借りてた本がちょうど読み終わったし」

「トワさんの家 知ってましたよね」

「そうそう先月、駅でたまたま会って、送ってやるって

 言ってなかったっけ?」

あのクソデカオヤジ!

「いつも同じ作業服着て、ボロボロのジープに乗って

 でも、私の理想の…」

「理想の?」

「お父さん像かな」

「お、お父さん?」

「うん、選べるんなら、あんなお父さんがいるといいのになって」

「お父さん、ですか」

なんだか ひと安心

「天樹くんは 生まれる前からお父さん いなかったんだよね」

「はい」

「似てるのかな?」

「どうなんでしょうね」

「あ、でももうすぐお父さんができるんだね」

「なんか実感わかないです」

「施設長さんもイイ人よね」

「もしかしてトワさん、オジサン好きなんですか?」

「そうかも!」

質問したのは僕だけど なんだか複雑な気持ちです


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