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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第4回  
ジープから降りるとすぐに

旨そうなカレーの匂いがした

思いっきり吸い込みたいけど

鼻毛がくっつきそうだからやめた

すっかり雪はやみ

満天の星空

「先に入ってれ」

「あ、はい、お邪魔します」

裏から入るとすぐに居間なんだ

居間の真ん中に どでんと石炭ストーブ

その上に煉瓦

煉瓦の上に鍋

カレーがクツっと煮え立っている

確かにこれは一人で食べたら一週間分はありそうだ

だから連行されたっちゅうわけか

「適当に座れ」

「あ、はい…」

ふと見ると 本棚に写真と蝋燭と線香立てがあった

研二さんのお父さん

千年オンコの下に連れてってた写真だ

あのとき 研二さん 

僕たちに隠れて 泣いてたっけ

「 … あの」

「ん? どした?」

「線香 あげさせてもらっていいですか?」

カレーをよそっていた研二さんは 黙ってうなずいた

「こんばんは!」

驚いた!

入ってきたのはトワさんだった

「あれ!天樹君 来てたんだ」

「あ、あの…今日三者面談があって、それで母さんが急に来れなくなって」

「そか」

「どうして トワさん」

「研二さんに借りていた本があって 返しに」

「そうなんだ」

知らなかった

トワさんって 深川で こうして

何度か 研二さんの家に…

「本 ありがとうございました」

「どうだった?」

「知らないことがいっぱい でも北海道の歴史って

 知れば知るほど もっと詳しく知りたいって思いました」

なんだ あのまんざらでもない笑顔

「天樹君はいいな 大学いったら たくさんこういう勉強できるんだから」

「まぁ 入れれば、ですけど」

「そんな弱気じゃだめよ 絶対合格! ね!」

「は、はい…」

「ほら、こっちきて喰え」

「はーい あ、福神漬け 買って来ましたよ」

「おう 天樹、どした?」

「…いえ」

トワさん 僕 なんだかソワソワします 


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