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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

最終回   23
「私…高校卒業まで 関口トワだったの」

巨人は台所でコーヒーを入れている

「お母さんはね 小樽の港に 車ごと」

「…」

「ブレーキの跡がないから 事故じゃなく 自殺だって」

「…」

「でも 私は知ってた」

「え?」

「お母さん 別れてからも会ってたこと…」

「…」

「殺されたなんて思いたくなくて 警察が言うようにお母さんは自分で…」

「…」

「でもやっぱり確かめたかった 自分の目と耳で」

「…」

「まさか こんなことまで知ることになるなんて」

巨人がコーヒーを運んできた

「二人とも 受け入れろ」

「え?」

「簡単に忘れることなんかできない 事実だからな」

「そうですけど…」

「これから先も まだまだいろいろある」

「…」

「足跡だと思って 受け入れるしかない」

たぶん それが一番なんだと思う ちょっと辛いけど

「しかし ひとつ言えることは…」

「何ですか?」

「お前たち二人は 何にも悪いことをしていない」

「ま、まぁ」

「これからも堂々と生きていけばいい」

「堂々と ですか」

「異母姉弟…ってことね」

「イボ?」

「結婚できないな」

「け、けっこん?」

巨人は笑い飛ばした

トワさんも笑顔だ

よく笑っていられるなとも思ったけど

こんなときは 笑うしかないんだ きっと




アイツからの何か…

でも病院にいることなんて 知ってるはずない…

病室に戻る前に 思い切って紙袋を開けた

中にはトシに買った ちょっと高めのチョコの箱が入っていた

さっきの看護師さんが 小走りで来た

「そうそう瀬川さん それ届けに来た人 巨人でしたよ」



                      おわり



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