20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第21回   21
「一緒にいらっしゃる男性に 気づかれないように渡して欲しいって言われて…」

廊下で看護師さんから 紙袋を手渡された

口がホッチキスで止められている

「誰から? ですか?」

「お急ぎのようで 名乗らずに…」

「そうですか わざわざすみません」

軽いが 一人で中身を確かめる勇気が その場では出なかった




家に着くと 中からドアが開いた

そこに巨人が立っていた

「入れ」

「は、はい…」

言われなくても 自分の家だ

居間のソファには 他に男が二人、昨日の刑事さんだ

「美咲から聞いただろう お前の父親のこと」

「はい」

「そいつが昨日来たことも」

「はい」

「この人たちが来たことは話したのか?」

「いえ トシさんから話してもらおうと…」

巨人はうなずいて

「まぁいい」

「それで、実は昨日ポストにこれが」

僕は紙をポケットから取り出し 巨人に渡した

「トーヨー321?」

刑事さんが立ち上がり その紙を手に取った

「宿泊先だな、行こう」

僕は慌てて

「行ったんですけど、もういませんでした」

「一人で行ったのか?」

巨人が僕を睨みつけている

「いや、トワさんと一緒に行って 会ってみようと…」

「そのことは 美咲も知ってるのか?」

「いえ、母さんは会ってみたいかって言ってただけで、この紙のことは、何も…」

ため息をつき 珍しく感情的になっている巨人

「いいか、その男はな…」

と、巨人が言いかけたところで ベテランの刑事さんが止めた

「…すまん」

「教えてください 何ですか?」

「…いや、それは まだ」

「人の勝手に家に入り込んで」

刑事さんたちが 困った表情をしているのがわかった

「勝手に呼びつけておいて」

「…」

珍しく研二さんも 困惑していた

「マルタイ 来ました」

トランシーバーから声がした

「わかった 事情はあとで説明する 今はここから出るな」

「どうして」

「天樹!」

久々に僕は震え上がった


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4584