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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第20回   20
部屋から出てきたのは 掃除のおばちゃんだった

「お忘れ物ですか?」

「あ、いえ…」

おばちゃんは怪訝な表情で隣の部屋に入っていった

携帯が鳴った

研二さんだ

「もしもし…」

「今どこだ」

「今は、あの…外です」

「自宅に戻れ」

「え?」

「いいからタクシーで来い」

「でも トワさんと後で…」

「トワも来る いいからすぐ来い」

そう言うと 通話が切られた

「ったく…」

僕は廊下を歩きながらトワさんに電話してみた

一階まで階段を下りても繋がらなかった

とりあえずタクシーに乗り

自宅へと向かうしかないようだ




お父さんは 未だに目を覚ますことなく

眠り続けている

もしかしたら このまま ずっと…

「おにぎり たべないか?」

ずっと トシが手を握ってくれている

「いろいろ ありがとう」

「いや かえってすまない」

「謝らないで 私こそ お父さんの面倒を押し付けちゃって」

「元気な龍さんに戻ってくれるといいけど」

「うん そうね」

でも 研二さんも気がかりだった

昨日の夜 天樹にすべて話しておけと言われた

言われた通り すべて話した

だから トシにも一度帰るように促した

そして 警察に行くと言っていた

警察に行って 二度と私の前に現れないようにするんだって

今の私の役目は 龍爺のそばで回復を見守ることだって

「そうだ…」

トシが何か言い出そうとしたとき

私は看護師さんに呼ばれた


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