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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第14回   14
「天樹と準備してきます 美咲をお願いします」

研二さんにそう告げて トシさんは僕を車に乗せ 家に向かった

母さんはうつむいたまま 僕らを見送りもしなかった

しばらく 車内での沈黙が続いた

トシさん きっとアレコレ考えてるんだろう

「責任」っていう二文字が浮かんだ

いろんな「責任」を背負って生きているんだなと思った

大人になるって そんなことなのかなと 

まだまだ子どもの僕は ある意味「無責任」に考えた

「荷物をまとめたら迎えにくるから 戸締りとかちゃんと確認してな」

「わかりました」

僕は車から降り玄関へと向かった




「会ったのか?」

私は小さくうなずいた

「家に来たのか?」

また小さくうなずいた

「なんだって来た?」

「天樹に…会いたいって…」

研二さんが 大きなため息をついた

「ガンなんだって だから死ぬ前にひと目 会いたいって…」

「他には?」

私は小さく首を振った

「今 どこにいる?」

また小さく首を振った

大きな右手が 私の頭を鷲掴みした

「心配すんな」

私は小さくうなずいた




テーブルに買い物袋が置いてあった

肉とか魚とか野菜とか

冷蔵庫に入れなきゃならないものが

そのまま放置されていた

とりあえずひとつひとつ冷蔵庫に仕舞い込んでいったら

リボンのついた小箱がひとつ残った

そのときピンポンが鳴った

トシさんだと思って玄関に出た

  


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