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作品名:北の嵐山物語 〜如月〜 作者:森野 鯨

第12回   12
静かすぎる待合室

母さんはトシさんに肩を抱かれていた

チセの中で僕が トワさんを抱いていたように

トシさんもきっと 母さんになんて言ったらいいか

わからないでいるんだろうと思った

救急治療室から 医者が出てきた

僕らは立ち上がり 言葉を待った

「再発したようですね」

やっぱり脳梗塞か

「部屋で倒れていた時間がどのくらいなのかによりますが…」

出勤したトワさんが じいちゃんの部屋に行くと

ベッドの脇で倒れていたそうだ

その30分ほど前に トイレに連れて行ってるので

その間 部屋でいつ倒れたのか 誰にもわからない

「血管を拡げる薬を点滴していますが MRIを撮ってみないと何とも」

「よろしくお願いします」

トシさんが頭を下げた

母さんは顔面蒼白 立っているのがやっとだ




なんて親不孝な娘だろう

父親が生死の境にいるというのに

私は永一のことしか考えていなかった

というより 永一のこと以外を考えようと必死だった

なんで今になって

「大丈夫か?」

トシのぬくもりだけが 私を支えてくれていた

話したい 

でも 今話すべきことじゃない?

天樹にも?

心底辛い

「何かあったのか?」

うなずきかけて 首を横に振った

今 話すべきことじゃない

でも 話したい

天樹にも?

どうしたらいい?

助けて…


「龍爺は!」

「研二さん!」




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