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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第9回   9
卵をゆでて つぶして マヨネーズを入れて 味を調えて

食パンに塗って 挟むだけ

たったこれだけのことなのに しばらくできないでいた

でも 自分の親の面倒を 他人任せにしている自分が情けない



目が覚めたら9時半を過ぎていた

いつもは6時に起き 6時半には家を出て

7時の汽車に乗り 8時ぐらいに学校に着く

列車のことを汽車というのは 北海道だけだと

修学旅行のバスガイドさんが教えてくれた

台所には珍しくサンドイッチが作ってあった



できた! 

これならコンペに出品できる

こんなに没頭したのは初めて

お父さんの模倣品ではない

自分の 自分だけの作品!



玄関を出ると

嵐山の紅葉が綺麗だった

澄んだ青空に 真っ白な薄い雲

飛行機から見た青空を思い出した

福寿園の玄関を掃除している人がいた

「おはようございます」

「あ、おはようございます」

びっくりした!

飛行機の夢の中に出てきたCAさんだ

どうしてここにいるんだ?

「あの…お世話になってる瀬川ですが」

「あ、龍之介さんの、どうぞ」

事務室にはトシさんがいた。

「おうテンキ、おはよう」

「おはようございます、あのコレ、お土産です」

八つ橋を差し出した

「お、サンキュー、これって餡子入ってるよな?」

「え? たぶん」

「よかった、そうだ紹介するよ、先週から来てくれてる入江さんだ」

「入江トワです、よろしくお願いします」

明らかに顔が真っ赤になっているのが自分でもわかった

「こいつは、龍さんの孫のテンキ、龍工房の三代目になる男さ」

苦笑いするしかなかった

「そうだ、龍さん、今お風呂だな」

「いいんです、お土産を届けに来ただけなので」

トワさんが気になる

「そんなこと言うなよ そうだトワちゃん、夜勤明けあがりだろ
 
 せっかくだから一緒に八つ橋頂こう」

「じゃぁ お茶入れますね」

気も利く

「で、どうだった? 桂子さんの故郷、京都の嵐山の風景は」

「むこうはまだ夏でした」

お茶を入れる姿 ステキだ

「そうだな、そうだ、トワちゃんは知ってる? ここの嵐山の命名由来」

「似てるから、じゃないんですか?」

「山の形が? ちょっと違うんだな」

「違うんですか?」

「まぁ 座りたまえ」

トワさん いい香りです




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