家につくとトシさんが出迎えてくれた
母さんはエンジンを切らずに家の中に慌てて入っていった
「お帰り」
「ただいま」
「で、流せたか?」
「渡月橋から」
「そうか、よかった、美咲から聞いたろ?、龍さんウチで…」
「知ってます」
「というわけだ、じゃ明日にでも、会いに来いよ」
「行けたら行きます」
「待ってるぞ、じゃな、ゆっくり休め」 トシさんは雨の中、傘もささずに走っていった
「あ、お土産! …明日でいいっか…」
慌てた様子で母が出てきた
「母さんこれから観光協会の会議なのよ、昨日作ったカレー、鍋にあるから」
「うん」
「洗濯物は洗濯機に入れといて」
「わかった」
車に乗り込み出かけていった
誰もいない静かな家
言われたまま 洗濯物を洗濯機に入れた
八つ橋の箱がふたつ
ひとつを持って仏壇の前に座る
笑顔のばあちゃんの写真をみると ホッとする
「おかえり」って言ってくれているような気がする
ロウソクに火を灯し、線香を立て、チンを鳴らし合掌した
「無事に帰ってきました 約束はちゃんと守ったよ」
「ありがとう」って言ってくれているような気がする
それから鍋を温めて ご飯をチンしてカレーを食べた
やっぱり一日置いたカレーは旨かった
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