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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第7回   7
午後から雨が降ってきた

秋を深める 冷たい雨

私は15時ピッタリに来た研二さんを見送っていた

入れ替わるように

傘もささずにトシが来た
 
「あれ、今帰ったのって、深川の?」

「そう、研二さん、傘ぐらいさしてきなさいよ」

工房に入り、タオルを貸した

「サンキュー、龍さんさ、楽しくやってくれてるよ」

「預けっぱなしで、悪いわね」

「ご飯も残さず食べてくれるし、そうだ、龍さんって和菓子、好きだっけ?」

「え?」

「何かにつけて、あんこ、あんこって言うから」

「脳梗塞になってから、味覚が変わったらしいわね」

「そうなんだ」

「で、なんか用?」

「いや、テンキが帰ってくる時間かなと思って、電話しても出ないし」

「あ!」

「ん?」

「忘れてた、雨だから駅まで迎えに行くってメールしたのに」

携帯を見た

「充電切れてるし!」




そんなことも知らずに

僕は駅の出入口で待っていた

寒かった

北海道は 秋というより もうすぐ冬だ


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