20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第21回   21
静かな夜だ

嵐山からフクロウの声が聞こえる

僕はベッドで横になり

進路希望調査の紙を見つめていた

研二さんの話を思い出していた

トワさんの言葉も思い出した

トシさんの夢も…

 …学芸員か

起き上がりパソコンに向かった

「学芸員になるには…」

何時に寝たかわからない

母さんは帰ってこなかった





カラスの声で目が覚めた

ヤバイ!遅刻!

と思ったが今日も振り替えで学校は休みだ

二階の部屋を出て居間に下りると

母さんがアルバムをめくっていた

「おはよ」

「何の写真?」

「これ、誰だと思う?」

一枚の古い写真だ

「あ!」

飛行機でみた夢に出てきた人!

「お母さんよ」

「え!ばあちゃん!」

「やっと夢をつかんだのに、お父さんと知り合って

 でも親戚一同から猛反対されて、でも好きで、駆け落ちしてきたんだって」

「それってホントだったんだ」

「研二さんが言ってた?」

「ううん、ばあちゃんが」

「そうだったの、そうよね、天樹はお母さんに育てられたようなものだものね」

 ごめんね、母さんは母さんらしいこと、何もしてなかった」

「別にいいけど、会ったよ、ばあちゃんに」

「え?」

「雲の上でね、ばあちゃん、可愛かった」

「熱でもあるの?その紙は?」

「あ、これ、進路希望調査、ここ保護者欄だから書いて」

「え? 大学進学?経済学部って…やっぱり熱あるの?」

「ないよ、熱も合格する実力も、ウチにお金がないのも全部わかってる

 母さんに迷惑はかけない」

「でも…」

「母さん、高校にも修学旅行にもいかせてくれてありがとうございました

 感謝しています でも これからはオレ、ちゃんと自分でやるから

 大学にいかせてください!」

「天樹… わかった、やりたいことがあるなら頑張りなさい」

「え?いいの?」

「もちろん、応援する」

正直、拍子抜けした

「じゃハンコも押しといて」

「わかった、でさ、天樹」

「なに?」

「実は母さんね」

電話が鳴った

「もしもし、トシ、え?わかった」

「どうしたの?」

「お父さんいなくなったって!」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 5829