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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第2回   2
次の日 生まれて初めて飛行機に乗った

運悪く 隣は担任だった

シートベルトを締めたとたん 担任は鼾をかいて寝た

運良く 僕は窓側の席だった

加速して 加速して 加速して 浮いた 

飛んだんだ ぐんぐん上がっていって旋回 

わぁ 街も車も まるでオモチャだ 

雲に入った 真っ白で 揺れる揺れる そして突き抜けた

見たことのない青空だ

雲の上って ずっと青空なんだ

この青空の先に 宇宙があって

月があって 火星があって 星雲があって

人は死んだら 星になるんだって ばあちゃんが言ってた

でも ばあちゃんは まだ このあたりのどこかに…

「お飲み物は何にします?」

声に振り向く

「飲み物 何にする?」

「え、じゃぁ コ、コーヒーで」

「あら、コーヒー飲めるようになったの?」

「え?」

差し出されたカップを 僕は取り損ねた

「!」


全身ビクついて目が覚めた

「どした?」

担任が怪訝そうな表情で僕を見ていた

「先生!ズボン」

「は?」

もちろん コーヒーがこぼれた形跡はなかった

「何にします?」

ワゴンを引いてCAさんが来た

夢で見た人とは 顔も着てる制服も違う

そういえば さっきの人は どこかで見たような気がする

「コーヒー」

担任が言った

「お前は?」

「あ、僕もコーヒーで」

今度はしっかり受け取った


雲の上って ずっと青空なんだ


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