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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第19回   19
家に着いたのは嵐山に陽が沈んでからだった

明らかに僕はおだっていた

母さんは工房に居た

「ねぇ母さん、お父さんってどんな人だったの?」

「え?」

「聞いたことなかったから」

「何よいまさら、そんな昔のこと、どうでもいいでしょ」

「じゃぁ、これから先、結婚は?」

「もうそんな話やめて」

「研二さんと結婚するはずだったって」

「誰がそんなことを」

「研二さん」

「二人の意思はおかまいなしの、お父さんたちの妄想計画」

「研二さんはまんざらでもなかったけど」

「冗談でしょ」

「きっと研二さん」

「うるさい!いい加減にして!」

珍しく怒鳴った

「まいどさん」

トシさんだ

「おうテンキ! ん?どした?」

「着替えてくる」

母さんが出て行った

「何かあったのか?」

「さぁ?そうだ、トシさんはいつでした?」

「何が?」

「何がって、アノ…いやー」

「初体験か?」

「いや、まさか、まだそんないきなり」

「ファーストキスか」

「まずソコからでしょう」

「中一だったかな」

ハヤ!

「チューイチ なんちゃって」

全然おもしろくない

「トシさんは、どうして芸人になりたかったんですか?」

「芸人?誰が?」

「母さんが高校のとき言ってたって」

「俺がなりたかったのは、芸人じゃなく学芸員さ」

「学芸員?」

「あぁ、博物館で働きたかったんだ」

「へー」

「でも第一志望に入れなくてな」

「どうして会社を継がなかったんですか?」

「俺が土建屋?ありえないべ」

「そうですか?」

「でもこの仕事、人生の先輩たちに教科書には書いてない

 ナマの歴史を教えてもらえるからな、よかったよ」

「へー」

「どうするんだ?将来」

「ちゃんと結婚して、子供を育てて」

「おいおい当て付けかよ」

「今夜考えます!真剣に!じゃ!」

僕は人生に超前向きになった



 


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