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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第18回   18
「龍之介はおるか!」

工房に染屋のおじいちゃんが突然現れ

杖がひっかかり グラスが割れた

「父は今、福寿園のほうに」

「寿朗のところか」

「あのー何か」

「これはどういうことじゃ!」

署名用紙を握っていた

「それは…観光協会で駅名変更の要望をあげようと」

「近文(チカブミ)のままで何が悪い」

「北の嵐山の名前をもっとわかりやすく広めたいと…」

「馬鹿もん!金儲けのために由緒ある大事な名を簡単に捨て去るなどもってのほか!」

「はぁ」

「お主はチカブミの名の由来を存じておらんのか?」

「確かアイヌ語で…」

「知らぬようだな、この名は五摂家の近衞家第30代目当主 後陽成天皇の12世孫にあたる

 近衛文麿公より頂戴した名である」

「こ、このえ? ふみまろ?」

「やっぱりここだったのね、美咲さん、ごめんね! おじいちゃん帰りますよ」

「わしは今講釈しておるのだ!」

「はいはい、あら! コレ おじいちゃんが割ったんじゃないの?」

「いいえ、大丈夫です」

「本当にごめんなさいね、マダラボケが進んじゃって、さぁ帰りますよ」

「離せ!このオカチメンコ!」

「北海道ではメンコは可愛いっていう意味ですからね」

割られたグラスが西日に照らされていた


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