いつもの席が空いていた
というより 何人乗ってんだって感じ
すると 飛び乗ってきた女性
「はぁはぁはぁ」
「トワさん!」
「あ、テンキ君! ここいい?」
「え? あ! どうぞどうぞどうぞ」
「ふー間に合った」
も、もしかしてだけど…
もしかしてだけど(もしかしてだけど)
もしかしてだけど(もしかしてだけど)
俺のことずううっと つけてきたんじゃないのおー!
「私ね、深川から通ってるの」
そういうことなのね ジャン!
「そうなんですか、僕も普段は深川に通ってるんです」
「え? 高校は?」
「深北です」
「ホント! じゃ後輩ね」
「そうなんですか!」
なんだか超ウレシイ
「担任は?」
「岡松先生です」
「おおー体育の熱血オカマっちゃんね」
「オカマって言うな!って叫んでます」
「うんうん、テンキ君は跡継ぎなんだね」
「あのー」
「ん?」
「僕、ホントはテンキじゃなくて ヒロキなんです」
「そうなの? だって施設長さん テンキって」
「漢字で書くと天空の天に樹木の樹なんで、担任もテンキって」
「そうだったの、ごめんなさい」
「いえ、いいんです、もう慣れてますから」
「ダメ! 私はヒロキ君って呼ぶね」
「ありがとうございます」
笑顔が可愛い 後輩ですから呼び捨てでも
むしろ 呼び捨ての方が僕は…
「ヒロキ君、部活とかは?」
「純粋な帰宅部です」
「そうなんだ、汽車通生は大変よね」
「まぁ、トワさんはいつ卒業ですか?」
「私は…ねん…」
トンネルに入って聞き取れなかった
「あぁ そうなんですね」
なんとなく聞き返せなくて 聞こえたフリをした
「トワさんっていい名前ですね」
「私はだいっキライ!」
「え?」
その後、トンネルが続いた
楽しい会話は とたんに途切れた
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