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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第12回   12
やっぱ可愛いな トワさん

いくつぐらいかな?

19? いや二十歳はこえてるでしょ

ひとりニヤニヤしながら 紅葉の嵐山を右に駅に向かって歩く

すると嵐山に続く橋から 染屋のおじいちゃんが歩いてきた

「こんにちは」

「ん? おう三代目、龍之介は元気か、しばらく見んな」

「じいちゃんはトシさんのところにお世話になったようで」

「なに? トシのところに? 厄介払いしおって」

「いえ、なんかお試しみたいで」

「いくつになった?」

「17です 高2です」

やばい 昔話がはじまる 戦争の 

「わしが17のときは…」

「ごめんなさい、汽車に乗り遅れそうなので…」

「おう、そうか」

染屋のおじいちゃんは 意外とすんなり解放してくれた

一応小走りで駅に向かう

染屋のじいちゃんはいくつになるのかな

戦争にいってるんだから 

80? いや九十は超えてるでしょ


駅前では 母さんと北の嵐山観光協会のおじさんたちが

署名を集める準備をしていた

一応 挨拶はしておこう

「こんにちは」

「おう 三代目!」

「龍工房は安泰だな、こんな立派な息子が控えてるんだから」

母さんはまんざらでもない笑顔だ

僕は苦笑するしかない

みんなで寄ってたかって 僕の人生を勝手に決めている

これってどうなのよ

江戸時代じゃあるまいし


近文駅は 無人駅

ホームに出てしばらくすると

列車がゆっくり入ってきた









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