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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第11回   11
家に帰ると母さんがそうめんをゆでていた

「トシさんって、部活とかやってたの?」

「トシは郷土史研究部の部長だったかな」

「ふーん」

「トシも馬鹿よね、土建屋の長男なんだから黙って会社を継げばよかったのに
 芸人になりたいから東京へ行くっていって」

「芸人?」

ちょうどテレビでタカ&トシの漫才が流れていた

「ヒマそうね、深川の研二さんに届け物あるの、行ってきてよ」

「自分で行けばいいじゃん、オレ研二さん苦手だし」

「午後から駅前で署名集めすることになっちゃったのよ」

「なんの?」

「近文(ちがぶみ)駅を北の嵐山駅に変えようって」

「へー」

「そうそう、ついでに染屋さんに署名用紙置いてきて」

「そうだ、小遣い、ないんだよなー」

「何言ってるのよ、修学旅行代金12万、お小遣い5万、計17万よ」

ぶーーーーーーーーーー




署名用紙の束と母さんのコンペ出品作品を持たされて家を出た

染屋さんのおじいちゃんが歩いて出て行った

おばさんが見送っていた

「こんにちは」

「あら、もう帰ってきたの」

「昨日、あの、コレ母から、署名用紙だそうです」

「わざわざありがとう」

すると前からトワさんが歩いてきた

「トワさん」

「こんにちは」

「あら、お知り合い?」

「先週から福寿園で働かせて頂いている入江です」

「あー、新人介護士さんね、トシちゃんから聞いてたわ、美人が入ったって
 トシちゃんとはいとこ同士なのよ、さ、入って」

「失礼します」

「じゃ、僕はこれで」

涙を呑んで今日はお別れします トワさん


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