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作品名:北の嵐山物語 作者:森野 鯨

第10回   10
トシさんの講談がはじまった

「時は明治21年、北海道の内陸部は未だ開拓の手が入っていない時代」

はじまると止まらない

「当時の帝国陸軍中将が、国見をするため当時の無名峰に登り立つと
 眼下に広がるは緑の大地、麓にはとうとうと流るる清らかな川筋
 遠くには蒼き山々が連なり、風光の美しいことは西京の嵐山の如し!」

気持ちよさげだ

「ということは、山の形じゃなくて、上からの眺めが似ているから嵐山と名づけられたん ですね」

「吉田のおじいちゃんからの受け売りだけどね」

「実は私、地域史に興味あるんです」

マジ!俺、歴史は苦手だ

「トワちゃん、そうなの!じゃさ、実は俺の見方は違うんだ、ちょっとコレを見て」

なんだなんだ? グーグルマップじゃんか 

「ところで、旭川に離宮を造る計画があったのは知ってるかい?」

知るか!

「上川離宮ですよね」

知ってるし!

「そう、初代北海道庁長官の岩村通俊は、北海道の開拓は内陸部から進めるべきと考え
 その拠点を上川とし、ここに一大都市を築こうとした」

へー

「しかし、横やりが入り頓挫、二代目長官の永山武四郎が、せめて離宮、つまり天皇の別 荘の建設をと願い選定したのがこの場所」

「上川神社!」

「そう、そして嵐山はこの北西方向 この二点間の距離と方向を覚えておいて…今度は京 都だ、京都の嵐山がここ、ここからさっきの距離と方向をあてはめると、この場所にな る、テンキ、ここには何があったと思う?」

「え? さ、さぁ」

「なんと、かつてここに離宮があった」

「え!」

「鳥羽離宮、つまり嵐山の命名由来は、京都を真似た都市づくりをめざした人々の心のよ りどころとしようとした結果だったんじゃないかと思ってさ」

「面白いです!施設長さん!」

「だろだろ!」

ふーん、なんだか俺だけ蚊帳の外…


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