校庭のナナカマドの実が真っ赤だ
「テンキ、もう窓閉めろよ」
5時間目の体育は長距離走だったから 少し開けていた
でも確かに すっかり汗も引いたし 自分でも肌寒さを感じていた
「もう、用意した?」
「全然」
本当は ちょっとだけしていた
仏壇の線香の灰
ひと握りの灰を チョコボールの箱の袋に入れて
こぼれないようにセロハンテープで止めたものだけは用意していた
「小遣いは5万以内だっけ?」
「確かそう」
「でも絶対守るやつなんていないよな」
そういうもんなのか
教室の戸が開く 担任が来た プリントを持っている
「いよいよ明日出発だな、でも、このタイミングでこれを配っとく」
プリントが前から順送りされてくる
「進路希望調査だ、なんで明日修学旅行に行くのにって思ってるかもしれんが、帰ってき たら11月だ、むこうはまだ暑いらしいが、こっちはすぐに雪が降る、その雪が解ける 頃、お前らは高校三年だ、卒業後の進路、いつ決める? 今でしょ!」
未だにこのフレーズを使うセンスを疑う
「提出は帰着後の最初の登校日だ、とりあえず今日は早く寝ろ、遅刻したら置いてくぞ」
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