ディルクは戦場を物凄い速度で走るシーザーを目の端に捉えた。 同時にシーザーもディルクを瞬時に認識した。 シーザーは双振りの懐剣を空間から取り出すと、 間髪入れずに跳躍し、その懐剣に魔力を帯びさせる。 5メートル程の上空からシーザーがディルクを目掛けて懐剣を投げつけた。 魔力によって強化された鋭い刃が光速回転しながらディルクに迫る。 ディルクもその動作に即座に反応していた。 シーザーの一連の動作が始まったその瞬間には、 ディルクは右後方の上空へと跳躍して、黒魔術の構成を展開させた。 彼の両腕を黒い炎が覆い尽くしている。 ディルクは左右から襲撃してくる懐剣を両腕の炎で交互に薙ぎ払い、 シーザーへ反撃を試みようとしたが、先程まで眼前にいたはずのシーザーは既に視界から消えていた。 ディルクがシーザを見失ったことを理解したその瞬間、 彼の視界はぐにゃぐにゃに歪んでいた。 ディルクの後方に空間転移していた シーザーがディルクの首筋に鋭い手刀を叩き込んだからだ。 完全に不意を突かれたディルクは軽い脳震盪を引き起こし バランスを崩して一時的に動作を鈍らせる。 そこへ畳み掛けるように連鎖的に、右脇腹、左脇腹にシーザーの蹴と拳が数発炸裂すると、ディルクは翻筋斗打って地面へと叩きつけられた。 追撃すべくシーザーは、空中で1回転して態勢を整え、 上空に右手を翳すと、数十振の懐剣を周囲に展開し、その懐剣全てを、起き上がりかけのディルク目掛けて投擲した。 前方からディルク目掛けて迫っていた懐剣の半数は途中で、ディルクの後方へと少しずつ空間転移し、時間差で彼を挟撃しようとした。
ディルクの全身が串刺しになろうとしたその刹那−−−−−−−−−−−−−−−−− ディルクを覆っていた魔力が爆発的に充満したかと思うと、 爆風とともに巨大な竜巻が吹き荒れ、迫りくる懐剣を全て吹き飛ばし、 彼の周囲数十ヵ所で大爆裂を引き起こした。 広範囲のその大爆発はシーザーをも巻き込んで吹き飛ばした。 吹き飛んでいるシーザーを踏み台にして セリーヌが跳躍し、その後方から戦闘モードの巨大化した子白龍が現れた。 煽情に鼓膜が破れるような大咆哮が鳴り響く。
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