−−−−−−−−−−−−−−−−− 進捗 :未完 作成日:2015年04月10日 更新日: −−−−−−−−−−−−−−−−−
寒い冬のこと。静かに雪が降り続けている。 降り積もるその雪は少年の肩に、髪に、のしかかってくる。
年端もいかぬその11歳の少年は泣いていた。 とても悲しかったからだ。
抉るような悲しみに、声にならぬ嗚咽が次から次へと止めどなく溢れ、呼吸器に異常をもたらす。 心臓がすり潰されるようにジンジンと痛み、今にも張り裂けそうになった。 脳は錯乱状態に陥り、自らが泣いている理由すら忘れ、ただひたすら、泣く事しかできなかった。
「・・・捨てられた。」
その事実を受け入れたとき、 悲しみは冷静なる絶望へと変貌し、いつしか純然たる憎しみとなる。
夜の街は暗闇に包まれ、わずかに光をもたらす街灯だけが彼の拠り所であった。
彼は、小さなパンを片手に捨てられていた毛布に包まり教会の前でうずくまっていた。
明日の朝にはこの教会からも追い払われるだろう。 わかっている。もう、それでいい。もう、諦めた。 人間など信じない。信じるべき価値などどこにあるのか。
諦めれば諦めるほどに、 心は落ち着きを取り戻した。
落ち着くように努めた。
だが、その落ち着きとともに得られた報酬は、 母親に捨てられたという残酷なその事実だった。
魔女の子などいらん。潰せばええんじゃ。それが無理なら捨てっちまえ。 鬼の子なんぞ、誰が育てるんじゃ。はよう潰せ。 その事実は彼の心を徹底的に破壊した。 一筋の涙が頬につたう。
今度は悲しみの涙ではない。静かな怒りによる涙だ。
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