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作品名:DESTINY 作者:把 多摩子

第1回   ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい。
『私が犯した罪を、拭いきる事が出来ません。ならばせめて、最善を尽くしたいと思います。……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい。
 犯した罪を償うことが出来るのならば、私は……。
 私は。
 ……いえ、何でもありません。大丈夫です、大丈夫です、大丈夫です。へっきです。
 祈りを捧げましょう、永久に見守り続けましょう、それが私の運命であるのですから。
 それで、全てが幸せに包まれるのならば』

 奇跡など”この場所には”存在しないのです。
 大罪人なのに、消えることが出来ないなんて、なんてもどかしい事。

【前奏曲】

 雪が降る、降って積もって凍えてしまった
 強かに雪は降り積もった、儚げに見えて牙を剥いた
 温かさで解ける雪、空から舞い降りる小さきもの
 けれども地面に降り積もった雪は、狡猾で
 緑の息吹を覆い隠す、その純白で覆い隠す
 息が出来ぬようにと覆い被さり、緑の息吹を凍えさせる
 美しき白、けれども何れは泥に塗れて見苦しく
 雪が降る、降って積もって凍えた緑
 雪が解けるのを待ち侘びた、息を吹き返すために待ち侘びた
 暖かな太陽が降りそそぐのを、待ち侘びた
 凍えながらも、待ち侘びた

 春の息吹を待ち侘びる、暖かな日差しのその季節
 奏でる音は、天上の調べ
 眩いばかりの光が、恋人達に降り注ぐ
 愛しい愛しい、君よ
 どうか君の歩く路が、光溢れるものでありますように
 全ての影を跳ね返し、暖かな路を進めるように
 ここから願い続けよう

 健やかに全てが育つ、生命の息吹を感じて
 残酷な現実の冷たい空気に晒されても
 強かに大きく伸びゆく生命の力強さよ
 全ての命あるモノは 一つの夢を抱いて
 懸命にもがいて生きていく 美しき世界
 繰り返す輪廻の輪に流されようとも
 行き着く先は 物語の終焉
 自分が決めた たった一つの世界
 願わくばそこが 自身が願ったものでありますようにと

 大樹となりし、もとはか弱きただの芽は
 幾多の数奇で過酷な運命を乗り越えて
 それでも必死に足掻いて干からびた大地から芽を出した
 生命の源
 全ては芽の一途な思いゆえ
 何度も輪廻し 魂を回帰し
 神秘の宇宙に飲み込まれて
 唯一の救いを求めて 愛しいモノに手を伸ばす
 永遠の想いをここに 心はそこに
 時はとまりはしない 残酷で愛おしいこの世界で

 実を幾つも幾つも、恩恵を受けてならせたもう
 至上の楽園に育つ大木 誰しもが欲し手を伸ばす
 魅惑で甘美なその実を 惜しげもなく人々に分け与えん
 一口齧れば笑み溢し 二口齧れば涙溢れ
 三口齧れば生命湧き出る
 全ての生命の根源は ただ皆に分け与える
 実を口にし、幸せそうに微笑む生命達を
 この上ない喜びだと思い 大木は歓喜する 
 風に乗って声を出し 多くの生命を呼び寄せる

 浅葱色した、綺麗な花が咲き誇る
 不思議な色合い 幻想の扉
 触れたくとも触れられない 魅惑的な異界の花
 触れた者には幸福有りと 広がる噂に皆奔放する
 けれども花は見つからない たった一輪の花を探し
 人々は滑稽に駆け巡った

 焦がれて欲する私の楽園
 浅葱色した花と共に その花の隣に芽吹きましょう
 そこで咲きましょう 永遠に咲き誇りましょう
 勇気を下さい そこで咲き誇れる勇気を下さい
 摑めない空虚な花ではなく 誰からも触れられる花を目指しましょう

 所詮は御伽噺 手にした者など一人もおらず

 者は極き、臆病の者
 弱くて、強く、反した者達の楽園を

――何もなき宇宙の果て 何かを思い起こさせる
 向こうで何かが叫ぶ 悲しみの旋律を奏でる
 夢の中に落ちていく 光る湖畔闇に見つける
 緑の杭に繋がれた私 現実を覆い隠したまま
 薄闇押し寄せ 霧が心覆い 全て消えた
 目覚めの時に 心晴れ渡り 現実を知る
 そこに待つのは 生か死か――


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