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作品名:醒睡笑 作者:桃色吐息

第1回   無題
@ 仮名草子の定義と特徴。
 仮名草子とは、江戸時代初期に、仮名、若しくは、仮名交じり文で書かれた、近世文学に於ける、物語、実用的な文章、を総称したものである、とされている。御伽草子(室町時代から江戸時代に掛けて成立した、短編の絵入り物語、及び、それ等の形式。広義に室町時代を中心とした中世小説全般を指すこともある。お伽草子、おとぎ草子、とも表記する。)の延長に生れて、仮名を用いた庶民向けの読み物として出版されて、雑多な分野を含む。作者の多くは、当時の知識人層であり、浅井了意、鈴木正三(しょうさん)、烏丸光広等が知られる。仮名草子の中から、井原西鶴による「好色一代男」等の優れた文芸が著されるようになり、これは後に、浮世草子と区別して呼ばれるようになる。内容としては、啓蒙的な内容のものが多い。儒教的な教訓を含んだ物語や、説話集、笑話の他、名所案内記、又、野郎評判記、遊女評判記のように、実用的なガイドブックとして読まれたものもある。上記により、「仮名草子」とは、実用性、教訓性、娯楽性、等を、その特徴としているように考えられる。その為に、後世に於ける、文学、美術、芸能、等に纏わる、あらゆる文化的発展に役立った、と言えるものとする。


A 醒睡笑」の特徴。
 「醒睡笑」とは、庶民の間に広く流行した、話を集約した笑話集、とされている。著者は茶人や文人として著名である、京(京都)の僧侶、安楽庵策伝、とされる。八巻一〇三九話が収録されており、戦国末期から近世に掛けて語られていた笑話を、全編四二に分類して、集大成したものである。江戸初期の咄本である。又、刊行されたのは三〇〇余話の抄録本、ともされている。「眠りを醒まして笑う」という意味により、「醒睡笑」と命名された。この命名時点を完成とみて、一六二三年(元和九年)成立とする資料と、後述の、当時、京都所司代の役職に就いていた、板倉重宗への献呈と奥書の付与を為した時点を完成とみて一六二八年(寛永五年)成立とする資料とがある。「醒酔笑」と記す資料も現存されているが、正当ではない、とされている。策伝の自序では、「策伝それがし小僧の時より、耳にふれておもしろくをかしかりつる事を、反故の端に置きたり」と話を収集した過程を述べている。収録されている話の中には、無名抄」「宇治拾遺物語」に由来するものがあり、同時代に発行された「戯言養気集」と昨日は今日の物語」と共通するものもある。それ等は、策伝が直接引用したものか、巷間に伝わっていたものを採用したものか、という内容の疑問については不明である。一六一五年(元和元年)頃に於いて、策伝が、板倉重宗の前で話した話の内容が、面白い、とされて、著者として纏めるように薦められた事から「醒睡笑」を重宗の元に届けた折(一六二八年、寛永五年三月一七日)、重宗と同席した子、重郷(しげさと)(板倉侍従)に献呈された(実際には重宗への献呈)。この経緯は、重宗による奥書に記されている。


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