翌、8月15日、由奈は幸せの国中央に聳え立つユーナ城(元ラウル城)最上階王室横、私用人部屋にて静かに震えていた。
「シェイラ星全国王集合しての会議ってな、なに・・・・?」 「そのままの意味ですよ、国王同士の状況確認と今後についての話し合いです。」 ラウルがそういうと、由奈は拗ねたような顔で反論する。 「そ、そんなの聞いてない・・・。」 「先日ご自身で承認なされたではありませんか、説明文は全く読んだ形跡がございませんが。」 由奈はぐうの音も出ない。テキトーに判を押すのはもう止めよう、そう心に誓った。 「さて、そろそろ開始のお時間です、隣の王室に移動しましょう、みなさまお待ちかねですよ。」 「うん・・・。」
2人が王室へと移動するとミィ、ジール、ユーリ、サムの各国王が椅子に座って待っていた。 「遅い!遅刻だ遅刻!幸せの国の新国王は時間にルーズだなぁおい!!」 ミィは立ち上がり由奈を睨みながら顔を必要以上に近づけじろじろと見る。 それをサムが呆れ後ろから引きはがすように両腕を抱える。 「新人いびりはよさないか!そもそも時間はまだ!全く珍しく時間より早く来たと思えばすぐこれだ!」 「離せサム!私はこないだちょっと遅刻しただけで散々怒られたんだ!その腹いせだ!!」 五国国王が一斉にいう。 『子供か!!』
「ふふ、ふふふふ。」 由奈が不意に口を押えて笑う。 「皆さん仲がいいんですね、面白い!ご挨拶が遅れました、橘由奈と申します。よろしくお願いいたします。」 由奈が落ち着きを取り戻し笑顔になると、ラウルも安心した。
「ミィって名前のお猿さんが申し訳ございませんでした、お怪我はありませんか?」 「お、お猿・・・大丈夫です、ありがとうございますユーリ様。」 「あら、私達のことは既に勉強済みですのね。会議にも何の書類も持たずやってくるどこぞのお猿とは大違いですわ。」 「さっきから人のこと猿猿言いやがってェ!戦争だ!!ごらあ!」 「戦争しか頭にないんですのこのお方、あまり近づかない方がよろしくてよ由奈さん。」
20年経っても2人は全く変わっていなかった。 ラウルとサムが仲裁に入る。 「20年前、あの時もこんな風に会議をしていたんだ。まぁもはや会議とも言えないけど。」 ジールが突如由奈に話を振る。 「その会議の中で、我々は君を紹介された。まさかここまで来るとは思わなかったよ。 しかもこの国の巨大な闇まで打ち払って・・・すごいね、君は。今のこの国はどうだい?」 「20年前、ここに来てからずっと必死に生きてきました。これまでの結果はただそれに付いてきただけ。 ラウル元国王や民間の方々の力、成の力がなければここまでは来られませんでしたよ。本当に感謝しています。 色んなことがありましたが、今のこの国は昔に比べると大分マシになったのではないかと思います。」 「マシ、ということはまだ満足ではないと?」 「勿論です、国民の方々に幸せになってもらうために我々がいる。この国にはまだ貧困などの問題から抜け切れていない。 これから色んな政策などを打ち出し、そういう方々も救って、みんなで幸せに、みんなで笑える国にしたいです。」 ジールは笑った。 「ラウルも昔似たようなことを言っていたな・・・はは、君達は素晴らしい国王だね!」
こうして、時間はあっという間に過ぎていき、国王会議は大騒ぎの中終わりを迎えた。 そして由奈は思った。 「何を会議したんだろう・・・?」
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