病院を退院後、紗英から自宅をもらった由奈。 家の中には家財道具から家電まで一通りが新品で揃っていた。 前日から住み始めた由奈であったが、由奈1人にはさすがに大きすぎる家であった。 早朝、由奈は目を覚ましてガバッと起き上がる。
「・・・・・?あれ、ここどこだっけ。」
由奈は些か低血圧な模様で、今日もボーっと起き上がったまま口を開けて座っている。 そんな時、枕元に備え付けられていた電話が鳴る。 プルルルル・・・プルルル・・・・ あ、あれ?由奈の体中から冷汗が一気に噴き出し、カッと目が一気に覚める。 「紗英さん・・・かな・・・ウソ、怖いどうしよう・・・。」 ガチャリ、恐る恐る受話器を手に取り耳に当てる由奈。 「もしもし・・・ど、どちらさまでしょうか・・・?」 「あ、お、おはようございます由奈さん!私です、成です。」 成の可愛らしい声に一気に由奈は安堵し力が抜けた。 「成ちゃんか・・・よかったーーー・・・おはよう成ちゃん、どうしたの?」 「おはようございます!由奈さんどうかなさったのですか?」 由奈は今の電話を紗英からの電話だと誤解したこと、怒鳴られると思ったことを包み隠さず説明した。 「あはは、紗英様からのお電話だと思ったのですね!昨日はお騒がせして申し訳ありませんでした。 あの、それで由奈さんつかぬ事をお聞きしますが、今日は何かご予定はございますか?」 「あはは、大丈夫だよ。ごめんねびっくりしちゃって・・・えーと今日は・・・予定は特にないよ?」 「左様ですか!でしたら・・・私とちょっと遊びに行きませんか?この国、案内したいので!!」 由奈の顔が一気に綻んだ、答えなどもはや答えなど聞くまでもない。
こうして、2人は1時間後に由奈の自宅の前で待ち合わせた。
1時間後・・・ 「あ、由奈さんお待たせしましたか?申し訳ありません少し手間取ってしまいまして・・・。」 やってきた成の姿に由奈はとても驚いた。 昨日は仕事中だったこともありスーツ姿だった成だが、 今日は秋っぽいガーリーコーデで、少し大人っぽくしながらも可愛さのポイントを忘れない由奈の憧れるようなコーデだった。 「成ちゃんかわいい〜!今度私にも服の着こなし方教えて?」 「あ、ありがとうございます!わ、私でよければ・・・是非!」 成は褒められ慣れていないのか赤面し恥ずかしそうにしている。 「じゃあ、行こっか成ちゃん!」 「は、はい!」
2人は、国中を歩いて成は色んな場所を由奈に教えていった。 そのたびに由奈は成の説明をメモしていった。
そして2人は国のはずれで大きな扉に辿り着く。 「ねぇ成ちゃん?この扉は何処につながっているの?」 由奈の問いに成は顔をしかめてごまかそうとした。 「由奈さん、あちらに行きませんか?美味しいものがたくさんあるんです!」 成の言葉で由奈は確信した、成は何かを隠している、いや、この国そのものが何かを隠していると。 今までの不審の全てが繋がった、そんな気がした。
由奈は、その先へ進む覚悟を決める。 「成ちゃん、この先を・・・この先の世界を私に教えて、いや、連れてって。」 由奈の言葉に成はとても驚愕した。そして、由奈の覚悟に成も重い口を開く。 「こ、この先へ進むことは出来ません、この先は・・・・・・・・。」 言葉に詰まる。 「成ちゃん・・・お願い、この先を教えて!」
そして成の口から信じられない言葉が放たれた。
「この先は、政府直属の奴隷の生活区画であり・・・処刑場です。」
次回「偽りの国」
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