光る階段を登りつづける穣と由奈。 「はぁ・・・はぁ・・・ま、まだでしょうか・・・。」 由奈は終わりの見えない階段に疲れを見せ始める。 「ははっ、大丈夫ですか?後少しの辛抱です、あちらをご覧になってください。」
穣が指差す先を見ると、遠くにとてつもなく巨大な扉が見え始めた。もう1時間は歩いただろうか。 「やっと見え・・た。そ、それにしても、遠いですね・・・」 由奈が苦痛にゆがんだ顔で穣を見つめると、穣は微笑んで答えた。 「この階段は各々のこれまでの人生を振り返るためにあるものなのです。 貴女がどんな日々を送ってきたのか、どんなことをしてきたのか・・・ そんなことを思い出しながら地球に別れを告げるための場所でもあるのです。」
ただ単に長い訳じゃなかった理由を聞き、由奈は自分の浅はかさに赤面する。 そうこうしている内に、2人は巨大に扉の前に辿り着こうとしていた。 由奈は扉の前に着くなり両膝に手をつき、苦しそうに荒く呼吸をする。 「この扉の先はもう・・・シェイラ、なんですか・・・?」 「もちろん、と言ってもこの先はシェイラ直属の政府の入星検査室になっていて、 しばらく時間かかるけど必ず審査は通れますのでどうぞご安心を。」
そして、穣は巨大な扉を軽々と開き早々と中に進む。 「ちょ、ちょっと待って下さ・・。」 由奈は周囲を警戒しながら小走りで必死に穣を追いかける。 少し走ると、穣は「入星管理所」と書かれた部屋に辿り着いた。 奥には光の階段で見たような巨大な扉が固く閉ざされている。
「入星確認者一名お連れしました、星は地球からbR5644番、橘由奈様です。」 部屋に入るなり奥の上司と思われる人に報告を入れる穣。
35000人以上もシェイラに来てるんだ・・・ でも[星は地球から]ってことは地球外の惑星からも来てる人?いるんだ? 宇宙人と出会ったらどうすればいいの・・・?
「・・・様!・・・奈様!・・・由奈様!!」 ふと我に返る由奈、穣が由奈をずっと呼んでいた。 考え事をしていたばっかりに何も聞いていなかった。 「ご、ごめんなさい!」 「大丈夫ですよ、では由奈様の本名と生年月日、身長と体重をお教えください。」 穣の言葉にほっとした由奈は上役と扉の前に移動し挽回しようと必死に答えた。 「橘由奈と申します、生年月日は1992年2月3日で身長は154cm、体重は・・・46キロです!」
穣は由奈の事前登録情報を上役に渡した。 「照合の方お願いいたします、登録情報との違いはございますでしょうか。」 「・・・うむ、今聞いた通りのようだな。」 どうやら情報の違いはなかったらしく、上役の男は笑った。 「橘由奈さん、我らがシェイラへよくぞいらっしゃいました。我々は貴女を心より歓迎いたします。 シェイラへの入星は以上で認められましたが、貴女にはこれからもう少々この星と国について、 勉強をしていただきますとともに、貴女の居住地を担当者と探すことになりますのでご了承を。 貴女のこれからの人生がより良いものとなりますよう、心よりお祈りいたします。 それでは、またいずれどこかでお会い出来ることを楽しみにしております・・・開門!!!」
固く閉ざされていた扉の無数の鍵が上からゆっくりと外れていく・・・。 3分ほどして一番下の鍵が外れた。しかし扉は開かない。 どうしたものかと由奈がおどおどしていると、上役の男が言った。 「どうされました?どうぞその扉を開いてください。」 しかし由奈にはこんな大きな扉を開ける気がしない、扉の前で立ち尽くす。
「大丈夫、今の貴女なら開けるはずです、それに運命の扉は自分で開くものですよ。」
そう言われた由奈は、ニコッと笑って静かに巨大な扉を押した。
重い・・・動かない・・・やっぱり私にはこんな大きな扉は・・・ いや、それはもう止めよう!弱い自分を・・・弱い気持ちを押し殺せ!私なら出来る!! 「んーーーーー!(違う!こんなんじゃダメだ!これは私の全力じゃない!もっとやれる!! もっと死ぬ気で・・・今持っている自分の身体の最大の力を使って・・・全力で開くまで!!) んんんんーーーー・・・・・やああああああああああああああああああああああああ!!!」
ガコン・・・扉がゆっくりと開きはじめる
「もっと、もっと、もっとおおおおおおおおおお!!!」
ガカーーーーーーーーン!!!
激しい轟音と共に扉は完全に開き、光が由奈を包んだ・・・
次回「幸せの国」
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