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作品名:見えない未来に待つものは。 作者:伊右衛門

第22回   最終話前編「光の国」
3人が病院に着いてしばらく経った頃、神の家及び収容所から激しい爆発音が轟く。
どうやら本格的な解体が始まったらしく、どちらも跡形もなく吹き飛ばされたようだ。
野次馬の民間人の噂ではこれからここは大きな公園になるのだとか・・・。

一方、病院の3人は、手早く治療を済ませると今回の一件で負傷した兵士達のところを渡り歩いて見舞った。
病院内の廊下で3人は話し始める。
「ふぅ・・・これで全員、かな?みんな大した怪我じゃなくてよかった。」
「ええ、これで全員ですね。由奈さん本当にここまでありがとうございました。」
「私は、貴女に出会えてよかったです、由奈さん。ありがとうございました。」

突如頭を下げ大きな感謝を示すラウルと成に、由奈はとても驚き困惑する。
「いえいえ、みんながいてくれたから・・・私はここまで来られました。私の方が…ありがとうございます。
でも、何もかも上手くいった訳じゃない。私は本当は神だって助けたかった。悔しいな・・・。」
由奈が天を仰いで涙をいっぱいに溜め、肩を震わせる。

「…由奈さんはよくやりましたよ、貴女は優しすぎます。彼が今まで何をしてきたかご存じでしょう。
彼自身だって自らの最期が良いものじゃないことぐらい、分かっていたはずです。元気出して下さい…。」
成は由奈をそっと抱きしめて囁くように言った。
由奈もそっと成の身体を抱き返し、2人は静かに泣き続けた。

しばらく時が経って、3人が病院を出て外に出ると綺麗な夕日が輝いていた。
「さて、私は最後の公務がある。これで失礼するとするよ。」
ラウルはそうとだけ言うと、その場を静かに立ち去った。

『最後・・・・?』

その後、由奈と成も別れ自宅に帰った。
時間的には僅か十数時間であったが、帰ってくるのが数年ぶりのような気分になる。
あまりに色々なことがあり過ぎた。疲れた・・・。
由奈は自宅に入るなり着替えもせずベッドに倒れ込む。
そっと目を閉じると、ラウルを殺し損ねて神に殺された兵士や、神の死に際が頭から離れない。
とても寝ることなど出来やしなかった、思い出す度に由奈は吐いてしまっていた。

そんな中気を紛らわそうと、由奈はふとテレビをつける。するとそこにはラウルの姿が映っていた。
「国王様・・・?なにこれ・・・。」
じっと画面の向こうで椅子に座り何かを離しているラウル。そして、やっと聞き取れた言葉は驚くべきものだった。

「奴隷制度の確立で多数の死者、負傷者を出し、
今朝からの戦闘においても私欲で兵を動かし多数の負傷者を出したことを認め・・・
私は本日をもって国王の座を辞することをここに明言する。」

「え・・・?」

由奈は家を飛び出した。

次回:最終回後編「最後の戦い」


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