パタタタ・・・ 大量の血が地面を叩く。
『由奈さん!!!』
成とラウルが絶叫する! 「いや・・・私は大丈夫、でも今の銃声はどこから…?」 突如フラッと神の体勢が崩れ、由奈がとっさに抱き留める。 「ちょ、ちょっとあんた何なの!しっかりしなさいよ・・・え?」 由奈が両手を背中に回すと、ぬるりとした暖かい液体の感触が両の手に広がっていく。 「水・・・?何でこいつ背中びちゃびちゃな・・え・・・?いやああああああああああああ!!」
由奈が手を確認すると、それは神の身体から流れる血液だった。 すぐに神を抱いてゆっくりその場に座らせ声をかける由奈。 「ちょっと、しっかりしなさい!!大丈夫よ、当たり所は悪くないから…きっと助かる。医療班!すぐにこいつの治療を・・・。」
振り返り、すぐに由奈は思い出す。隊は自分達以外は全員撤退させていたことを。 「やだもう・・・どうしよこのままじゃ出血が・・・死んじゃうよ・・・。」 「お前も…私の死を願っていたのでは…ないのか?」 「喋らないで!何とか止血するから!!」 「ここにいる我が兵は…我が兵でありながら…私を殺したがっていた、そしてついに今日下剋上を起こした…。」 「黙りなさい!!」 「お前は私が憎くないのか?何故治療などしようとする、何故助けようとする。」
由奈は涙を目いっぱいに溜めて神に言う。 「あんたのことは恨んでるよ!憎いよ!大っ嫌い!人の命を弄んで奪って奴隷なんかにして!神なら何をしてもいい?ふざけんな! でもね、嫌いだしムカつくし恨んでるけど・・・何があったとしてもそいつの命が奪われていい理由にはならない!! あんたにはこれから先私達が世界の常識と命の重さを頭の天辺から足のつま先まで叩き込んでやるから覚悟しなさい! だから生きるの…絶対助けてやるから…世界の温かさも世界の優しさも全部教えてあげるから…諦めないで・・・ほら、行くよ。」
由奈は血だらけの神を背中に背負い歩き出す。 「ラウル国王様も…成も、歩ける?ほら、もう終わったんだよ。行こう…?」 成とラウルも由奈に遅れぬよう必死に歩く。
パァン!!パンパンパン!!
由奈の背中に4回の衝撃が走る。 「まさ・・・か・・・・。」
由奈の肩を掴んでいた神の手は、ぶらんと宙に落ちた。
次回「無力」
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