机の上に置かれた物体を怪訝な顔で見つめる由奈であったが、 しばらく内部を見つめて覚悟を決めるように手に取った。 「中にあるものは空気とこの手紙だけみたいね他にこれといった変哲はないか・・・。」 しかし、手紙を包んでいる膜のようなものが邪魔で手紙に触れることができない。 由奈は膜破ろうとするものの、どうしても破ることができなかった。
そこで、由奈は手元にあったコンパスを専用のケースから取り出す。 「これで刺したらどうなるのだろうか、よいしょっと・・・。」 静かに物体を机の上に置き、コンパスの針を物体にゆっくりと刺した。
すると、その瞬間まるで風船が割れるようにパンッという音と共に 膜のようなものは破れ、ひらりと机の下に手紙のような封筒が落ちる。 やった!という歓喜の思いで笑顔になるものの由奈は敗れた膜を手探りで探す。 視覚にも捉えることができなかったそれの方が由奈にとっては研究対象になっていた。 「あ、あれ〜?どこにもない・・・?」 机の上、机の下、どこかに飛んだかも知れないと部屋中を探す由奈であったが、結局それの発見には至らなかった。 再び残念そうな顔をする由奈であったが、落ちた手紙を手に取るとすぐに忘れて笑顔に戻る。 「問題はこの手紙の内容・・・一体なにが書かれているんだろう。」 封筒の表裏には宛名も何も書かれていない。
由奈がゆっくり封を開けると・・・ぶわっと激しい風に見舞われた! 茫然とするばかりの由奈であったが、心の奥の好奇心が止まらない。 「なに・・・これ・・・あはは!」 非日常の有り得ない現象と胸の高鳴りに由奈は思わず笑い出した。 その風は由奈を包み込みまるで竜巻のように由奈の周囲を回転し続ける。
由奈が笑顔で何が起こるのかと周囲を吹き荒れる風を眺めていると、 突如風の壁に世界中の国旗が映り始めた。 国旗が映るばかりでこれといった説明はない。
由奈は少し状況を考えると、とある考えに至った。 「言語選択・・・ってことかな?」 即座に日の丸の国旗を探すと、何の躊躇いもなく押す。 すると、「日本語が選択されました」とのアナウンスが流れた。 予想の的中に由奈は飛び上がって喜ぶ。 完全にこの状況を楽しんでいる、恐怖は感じていないらしい。
その頃、風の外では・・・ 「由奈!!由奈!?この中にいるの!?返事をして頂戴!」 先ほどの風の轟音で駆け付けた両親が必死に風の壁を壊そうとしていた。 しかし、叩いても叩いても風に弾かれる、由奈にも声はまったく届いていない。
「これより人生再構築プログラムを起動します、しばらくお待ちください。」 謎のアナウンスが流れ始めると同時に、壁に画面のようなものが映り始める。 画面には、右に地球、左に知らない星が映っている。 由奈はそれをじっと見つめ、知的興奮を加速させていた。
「スタンバイ完了、これよりプログラムを開始します。」 そのアナウンスを聴きふと我に返る由奈。 「これは人生再構築プログラム、その名の通りあなたの人生をよりよいものにするためのプログラムです。」 その説明を聴き思わず声を上げる由奈。 「じ、人生を再構築!?そんなことができるの?」 「ええ、可能です。」 会話が成り立っていることに気付いた由奈は驚いた。 「あなたこの世界、地球で日々の生活に満足していない、 または絶望している、またはこの世界から出たいと感じている、 のいずれかに該当している、違いますか?」 その問いに、由奈はコクリと頷いた。 「そんな方々を救うために、私たちは活動をしています。」 「救うって、いったいどうやって・・・?」 画面は一面左の知らない星の映像へと切り替わった。
「貴女を我々の星、シェイラに歓迎します。」 その星の風景や歴史が画面に映り始める。 「私が・・・この星に行くの・・・?」 「ええ、この世界に満足していないのなら私たちの星に来てはいかがでしょう、という提案です。」 「そ、そんな急に言われても・・・!!」 さすがの由奈も困惑と戸惑いを隠せず焦りと不安に襲われる。 「もちろん、分かっております。これは橘由奈様の選択権です。猶予は3日与えます。 来るか来ないかの答えは先ほど開いた封筒の中にある選択書からお選びください。 一度でも書いてしまうと選択とみなされ消すことはおろかすぐに我々の元に届くのでご注意を。」 「分かりました・・・。」 「未来の数は無限にあります、しかしそれを決めるのはあなた次第・・・いいお答え、お待ちしております。」
そういうと、アナウンスは消え、由奈を囲っていた風の渦も消え去った。 茫然と立ち尽くす由奈を両親は強く抱きしめる。 「由奈、あなた大丈夫なの?」「怪我はないか!?」 由奈は何も答えることはなかった。
果たして由奈の出した選択とは・・・ 次回「私の幸せ」
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