神の領域へと侵入した3人。 遠くに神の家らしき家が見えるも、何か様子が変だ。 「収容所の数十倍の敵兵なんだよね・・・?道にも家にも、人の気配が全く感じられないんだけど・・・。」 「どうなっているんだ・・・?とにかく先に進んでみよう。」 3人は割とすぐに家に到着する、しかしやはり誰もいない。 これより先に道は見当たらない、途方に暮れる3人であったが一気に事態は急変する!
パァン!と乾いた銃声が辺りに鳴り響く。
「な、銃声!?一体どこから・・・。」 由奈が驚き辺りを見渡すと、倒れ行くラウルの姿が見える・・。 無数の兵がこちらをにやにやと見つめ銃を構えていた。 「ラウル国王様!!まさか撃たれたのですか!?」 「ぐ・・・心配ない腕を撃たれただけだ・・・。」 ラウルの右腕からは鮮血が勢いよく噴き出している。
「おい、貴様どこを狙っている…私は頭を撃ち抜けと言ったのだ…。」 兵の中から1人の男が姿を現した。 「も、申し訳ございません神様!次は必ず…」
パァン!
「次などある訳なかろう?何故この私がわざわざ貴様ごときの為に次のチャンスを与えねばならない…。」 兵士は頭を撃ち抜かれ即死する。 「このゴミを片付けろ、邪魔で仕方ないわ。」 他の兵士が、殺された兵士の遺体を崖下に投げ捨てた。
3人は目の前で起きていることが理解できずに立ち竦む。 「な…何をしているの…?あんたの仲間なんじゃないの!?」
男は蔑むような目で3人を見つめ、口を開く。 「私は神だ…何をしても許される、私することは全て正義なのだ。邪魔だから殺した、それだけだ!異論はあるか?ゴミ。」
こいつを殺したい!殺さなければならない!殺すべきだ!今ここで!人生で初めて由奈は人に本当に殺意を覚える。 しかし、この人数差。尚且つラウルは撃たれ負傷。万一にも勝てる見込みはない。 「く…あんたが神って奴なのね…。」 「如何にも。よくぞここまで侵攻してきたものだ、しかも私の玩具まで全員解放するとは、褒めてやろう。」
「何が神よ…何が玩具よ…あんたはただの人の命を弄ぶ最低なクソ野郎だ!とっととその地位から降りなさい!!」 「由奈さん、奴を刺激しては・・・。」 ラウルが右腕を押さえながら由奈を止める。 「いいのよ、どの道助かる可能性だって0に等しいんだから…言いたいこと言ってやる!!」 「ははは、人生を諦めて負け犬の遠吠えか!ここまで来てご苦労なことだな!!すぐに楽にしてやる。」
由奈の眉間に銃が突きつけられる。 「・・・・・・くっ・・・こうなったら・・・。」 謎の女が神に向かって剣を握り突っ込んでいく。 「うおおおおおおおお!!!」 「愚か者め・・・。」 パァン・・・銃声と共に女は倒れ、着ていたヒジャブのようなものも吹き飛び顔が露わになる。 「な・・・・り・・・・・?どうして、ここに・・・・。」 変装して部隊に入っていた謎の女は成だった!! 「由奈さんを…1人で死なせないと言ったじゃないですか…死んでもらっちゃ困るって言ったでしょう?」 「ま、まさかあんたが民間人を手当たり次第に招集してあそこまでやったの!?」 「はい・・・少しでも由奈さんのお力になれればと思ったのですが、案外…上手くいきました。えへへ…。」 由奈の目にぶわっと涙が溢れる。
「やっと死の恐怖を実感したか?反逆者。いい顔だ…ほら、もっと泣き叫べ!脳をぶちまける前になあ!!」 「あんたってほんとバカ…逆よ。今私は、ああ、ここで死ねないな、生きなきゃって思ってるの。」 「ふはは、バカめ!この状況からどうやって脱する?周囲は我が兵に囲まれお前の仲間は全員負傷で動けない。私の勝ちだ。」 神が顔を歪ませて激しく笑う。 「もうこの世に未練はないな?では、死ね!!」 グッと引き金に力を入れる神。
パァン!
噴き出した鮮血が由奈の上半身を赤く染めた・・・
次回「男の魂」
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