夜が明け、時刻は午前6時。日の出で東の空が赤く染まり国中を光が包む。 由奈とラウル、56名の兵士たちはすぐに装備を整え隊列を組み、収容所へ向かった。 夜が明けたばかりの国内は静まり返り、まるで普段とは違う国のようだ。
しばらく歩いて、遠くに収容所が見え始める頃、ラウルが異変に気付く。 普段閉まりきっているはずの収容所の扉は全開になり、内部から多くの人間の声が響き渡っている。 「由奈さん、何か様子がおかしい・・・早く行きましょう!」 2人が走って収容所へ向かうと、内部に招集していない民間人が大勢鉈や包丁などの身近武器で兵士達と戦う姿が見えた。
「こ・・・これは一体どういうこと・・・?」 由奈はすぐに内部に侵入、戦闘から外れた民間人を保護し話を聞く。 「あなた一体何をしているの?この反乱の指揮者は誰!?」 「さぁ、分からないわ。でも素晴らしい指揮で現状私達が圧倒しているわ!」 「(はやり末端じゃ情報はダメか、しかも圧倒って一番危険な状態じゃない、仮にも相手はこの国の最強部隊だ。 今は民間人の突然の謀反で不意を突かれて圧倒されていても数時間後には形勢が逆転するのも必至と言ってもいい。 どうしよう、全員下がらせるか?いや、この状態じゃ私達の声ですら彼等に届くかどうか・・・いや、やるしかない!)」 由奈は兵士にバズーカ砲を空中に撃ち上げるよう指示を出す。
・・・・・ズガァァァン!!!
爆音が収容所中に響き渡り、誰もが戦闘をやめてその場で沈黙した。 未だ爆音が響く中、由奈は声を張り上げて兵士達に指示を出す。
「混乱しているこの期を逃さないで!すぐに民間人を1人残らず救出せよ! 軽度の怪我人はなるべく民間人同士で治療して!医療班は全員直ちに隊列から離脱して重傷者の治療を! 奴隷救出班は発見後すぐ安全区域に誘導!絶対こちら側の戦闘区域には入らないように! 残りのメンバーは一気にここを叩くよ!でも狙うのはあくまで神直属兵士の各部隊指揮官のみ! 捕えたら投降を促して!兵士は追って来る者、向かって来る者のみ相手にして!逃げる相手は深追いしなくていい! よし、じゃあ最後に・・・全員、生きて帰るんだからね!ではこれより先の各班散開!!」
『はっ!!』
兵士達が一斉に自らの持ち場に入る。 「いい指揮だ、彼女を一般人にしておくのはもったいないな・・・王の素質がある。無論まだ、原石にすぎないが・・・。」
そしてついに激しい戦闘が始まる! 人々の悲鳴、銃声、爆撃音、怒号が収容所内に木霊する。 由奈は各班の動きを確認しながら、神の家までのルートを切り開いていく。
しかし、由奈の前に巨体の男が立ちはだかる。指揮官の1人だろうか。
「貴様が反乱軍の総指揮だな?ふん、小便臭い小娘が・・・自分の罪を分かっているのか?」
「罪ね…下らない・・神って奴が何者かは知らないけど、権力で思い上がっちゃったんだろうな。目を覚まさせてあげなきゃね。」
「黙れ!貴様のしていることは神への冒涜!我らが神に出会うこともなく貴様はここで俺に殺される! 哀れな快進撃もここまでだ!痛みを感じる間もなくその首を刎ねてくれるわ!!死ね!!」
男が巨大な剣を持って襲い掛かってくる。 そして、その剣が正に由奈の頭に振り下ろされようというその時、 ガキィィン・・・・! 剣は激しく地面を叩いた。
「な、なに!?」 その瞬間、由奈は鳩尾に一発パンチを叩き込む。 「うぐぅ・・・。」 鳩尾を抑え苦しみ、前かがみになる男。 由奈はその瞬間、素早く1回転するとその反動を使って顎に裏拳を叩き込んだ。 「ぐああ・・・・あ・・・・。」 ドサッ・・・・
ガチャリ 由奈は男の首に剣を当てる。 「死にたくなければ動かないことね、さぁ、降伏しなさい。」 男は少し笑うと、降伏を認め自分の指揮する隊を全員下げた。 「ちびっこい娘だと思っていたが…まさかここまでやるとはな。見事だ。あークラクラする・・・。」 「まだ立ち上がっちゃダメ、仮にも脳震盪に近い状態なんだから…今ウチの医療班が来るから待ってて!」 「ふん、敵を助けるのか?甘っちょろいなお前・・・。治って俺がまたお前を襲ったらどうする?」 「そんなのその時考えればいいよ、でも今はゆっくり休んで、ね。」
収容所、第一線。由奈の統率で戦闘はすぐに終結。 兵士達の迅速な戦闘で全部隊指揮官を捕え、拘束。 神の家への道は開かれた。 現状負傷者30名重傷者3名 死者0名。
次回「強行突破」
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