由奈は耳を疑った、きっと聞き違えたんだ、そうであって欲しいと心から願った。 しかし、両腕にはずっしりと大きな銃が腕に伸し掛かかり、嘘だと思いたい気持ちを現実に引き戻す。 「そんな・・・人を殺せ、しかもそれが神だなんて・・・全部嘘なんですよね、止めてくださいよ・・・。」 由奈は瞳孔が全開に開き、大量の冷や汗を流し恐怖に怯えながらラウルに全ての訂正を求める。
「大丈夫だ、そんなに怯えなくていい。たかが数人葬るだけじゃないか。そんなに怖がる必要はない。 それに、君達は罪には問われない。ほら、もう安心だろう?はははっ、ほら笑って笑って、笑顔で行こうよ。」
「笑える訳ないじゃん!?それに、たかが数人葬るだけだなんて・・・あなた国王なんでしょう!! どうして人の命をそんなに軽視できるの!?罪に問われないとか・・・そんなの関係ないよ・・・怖い・・・。 命はそんなに軽くない・・・奪ったらいけない大切なものだよ・・・国王様おかしいよ!!」 由奈の目にはぶわっと涙が溢れ、床にぺたんと座り込み大粒の涙をこぼし続ける。 「由奈さん、大丈夫ですか?逃げましょう、今すぐ・・・お連れします・・・。」
成が由奈を抱き上げ、歩いててきた道を戻ろうとするもラウルと兵士達がその前に立ち塞がった 「ふん、逃がすと思うか?やれ!」 成と由奈は一瞬で捕まってしまう。 「離せ・・・!離してよ!!人殺しなんてしたくない!国王様目を覚まして!」 「くっ・・・こいつら政府の国王の身辺警護の連中です、私達で敵う訳がないです由奈さん!!」 2人が必死に逃れようと暴れていると、ラウルは部下の1人に指示を出した。 「ヘタに外に出して計画を誰かに話されても困る、一旦こちらで保護させていただきます。」 ラウルがそういうと、2人は奥の部屋に連れられて行った。
辿り着いて周囲を見渡すと、そこにはトイレと、監視カメラと思わしき物、汚れたベッドがあるだけの小さな部屋であった。 「君達には、明日あのバカどもを始末するまでここで暮らしてもらう。ほんの10数時間の辛抱だよ。」 「私達はやりません!人を殺すなんてできません!だから帰らせてください!!」 由奈が激しくそういうと、ラウルは恐ろしいことを言い出した。
「そうか、できないか・・・・ならばこの場で2人とも死んでもらうがいいか?」
「な・・・・・・」 「この場で死ぬか、生きながらえてあいつらを殺すか、どちらかを選べと言っているんだ。」 国王のあまりの豹変ぶりに、由奈も成も言葉が出ない。 「この国を変えるためには奴らを殺すしかないんだ。私の娘と妻も、奴らの言いがかりで処刑された。 仕事仲間も、友人もみんな殺された・・・!全てあいつらに!!このまま放っておけばまた犠牲者が増える。 あいつらは笑って暇つぶし程度に軽々と人を殺すんだ・・・絶対に許すわけにはいかない・・・。」 「国王・・・様・・・。」 「私は本気だ、ただ、巻き込んでしまった君達には申し訳ないと思っている、本当にすまない。」
・・・・地下の分厚い岩盤を見つめ、由奈は大きく息を吐いた。 「やるしか、ないんだよね・・・?」 「ま、まさか由奈さん・・・正気ですか!?」 「うん、正直凄く怖いけど・・・これが私の心の正義だと思うから・・・行くよ!」
次回「神の家」
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