修の先導で2人は地下室へと向かい静かに歩く。 修との距離を少し開け、2人はいつでも戦闘に入れるように警戒を解かぬよう進む。
15分程の時が経ち、修はラウル城すぐ横の空き家と見える家へと入って行く。 「勝手に入って大丈夫なの?政府に嗅ぎ付けられたら・・・。」 由奈が不安な顔でそういうも、修は何も答えることなく奥の部屋へ早足で歩いていく。 「由奈さん、新手の拉致かもしれません・・・下がって・・・。」 修は、一番奥の部屋に入るなり床の埃を払っていく。 「ここか・・・毎回場所を変えるなどご苦労なことだな・・・鍵、お借りしても?」 修の大きな手が鍵を求めこちらに伸びて来る。 由奈は突然の申し出に焦りながらもすぐに修に鍵を渡した。
カチッという音と共に地下への道が修の手で切り開かれた。 中は薄暗く、地下深くまで階段が続いているように見受けられる。 「では、参りましょうか・・・。」 コツ・・・コツ・・・という3人の足音が地下通路に響き渡る。 「成怖い・・・!」 「私もですよ由奈さん・・・!」 2人が一歩一歩を慎重に下りていくと、程なくして扉の前に辿り着いた。 「ここが私たちの秘密基地と言ったところでしょうか。」 「達・・・?他にもいるの?」 「まぁそれはおいおい・・お話しますから、では入りましょう。」 修がゆっくりと扉を開き、中に入る。 由奈と成も修の後を追って中に入った。
中は大きな部屋で武器やら鎧、資料や幸せの国の地図などが山のように揃っていた。 「なにここすっごーい・・・・。あ、あれ?どなたかいらっしゃる・・・。」 由奈は奥に座っている人物に気が付いた、しかし、何かおかしい。 成は由奈を再び後ろに下げ警戒態勢に入る。 「もういらしてたんですね、2人ともお連れしましたよ。」 「そうか、手間かけさせたな・・・。」 奥の男は立ち上がり、ゆっくりこちらに向かって来ると成の前で立ち止まり後ろの由奈を見つめていう。 「私の名前はラウルという、こうして会うのは初めてだね、橘由奈さん。君は由奈君の従者かな?」 由奈は言葉が出ない。こんな人私は知らない、見た目からしてかなり高貴な人物にも見える。 「あの・・・一体あなたは・・・?どこかでお会いしたでしょうか・・・?」 「ああいや面識はないよ、私が一方的に君を知っているだけでね。」 「それってどういう・・・・・」
由奈が質問をしようとすると背後から大勢のラウル城の兵士が現れ、2人を取り囲んだ! 2人に銃を突きつける武装兵、パッと見ただけでも5,60人はいるだろうか。 修とラウルはにやにやとしてこちらを見つめている。
「ハメられた・・・みたいね。」 「もっと警戒しておくべきだった!由奈さん申し訳ありません・・・。」
2人が人生を諦め投降しようとしていると、ラウルが兵士たちの前に出て来る。 「こらこら、止めないかお前たち!ここでの護衛は要らないと言ったろう!?」 「しかしラウルさまに何かあったら・・・・。」
状況がさっぱりわからない、このラウルという男いったい何者なんだ? ラウルと部下と思わしき男たちが会話を続ける中、2人は身動きすら取れなかった。
「さて、時に由奈さん。君はこの世界を、この国をどう思う?」 由奈は一瞬戸惑いを見せるも堂々とラウルの質問に答えた。
「自然は豊かだし、ご飯は美味しいし、この世界はとってもいい星だと思います。 ですが、この国は別のようです、こんな国は、絶対に許すわけにはいかない!」 ラウルは、由奈の答えに大きく頷くと兵士達にサインと声で指示を出し始めた。 「全員武装解除、これよりお前達全員を橘由奈の配下とする。」 由奈には何を言っているのか分からなかった。 「ちょっと待って・・・あなたは一体誰なの答えてよ!」
ラウルは笑顔で由奈の顔を見つめて言う。 「私が誰かを名乗る必要は今はない、ただ言えることは君達の味方でありこの国の再生を誰より願っているということだ。 私にはもう無理なんだ、出来なかった。すまないが、この国を破壊してほしい。それだけの願いだ。頼めないだろうか? 無論、君たちが必要なだけの支援はさせてもらうし、必要とあらば何人でも追加で君たちに派遣するとしよう。
「由奈さん、一度にこれだけの味方を手に入れればかなりいい人数になるんじゃ・・・。」 「そうね、受け入れても私たちの障害にはならなそう・・・。では、分かった。いい人材をありがとう。」
こうして、新しい仲間ラウルと56人の兵士が新たな味方になった。
次回「真実」
|
|