翌日早朝午前4時、由奈と成は国中を徘徊していた。
「こんな時間にどうしたんですか由奈さん、昨日から変ですよー・・・。」 早足で何かを品定めでもするように辺りを見渡しながら歩く由奈に、成は必死で着いて行く。 それからも、急に建物の前で足を止めてはまた歩き出すをひたすらに繰り返した。 「由奈さん、置いてかないでくださいよー・・・もー・・・待ってください、どこに行くんですかー?」 由奈はそれでも足を止めることはなく、歩きながら成の質問に答える。 「ああ、成もう由奈でいいよ、友達なんだから。呼び捨てにしていいから。」 「ちょ・・・私そんなこと聞いてないですよ〜!」 聞いたこととてんで的外れの回答が返ってくる、成は動揺を隠せずにいた。
その時、由奈は道のど真ん中で急にぴたりと止まり、成に聞いた。 「ねぇ成?この国で政府の目が届かい場所ってあるかな?」 「ありませんよ、この国の住宅の一部屋一部屋には盗聴器、外にも所狭しと監視カメラが仕掛けられています。迂闊な行動は出来ないですよ・・・。」 急に由奈は青ざめ冷汗を大量に流し涙目になる由奈。 「え・・・・?じゃあ昨日のも全部聞かれてた・・・私さっそく指名手配・・・?」 由奈の普段とはあまりに違う動揺しきったひどい顔に成は思わず小さく笑った。 「ふふっ、大丈夫ですよ由奈さん。昨日話した場所は国内外に仮にも極秘とされている場所なので 証拠を残すようなカメラや盗聴器の類は一切ありません、奴隷の出入りもありますしね、ですのでご安心を。」 成の言葉に一気に安堵した由奈は胸に手を当てふーっと大きく息を吐いた。 「ふふふ、この国を壊すなんておっしゃっていたのに、やっぱり普通の女の子ですね由奈さん!」 由奈は一気に顔を赤らめてぷるぷると震えながら恥ずかしそうにしている。 「も、もう当たり前じゃん、だって私は元は日本っていう平和な国で何の苦悩もなく暮らしてきたんだもん。 怖いよそりゃ、不安もいっぱいだよ、でも誰かが立ち上がらなきゃこの国は一生このままでしょ? これ以上亡くなる人や傷つく人が増えちゃいけないんだよ、だから・・・私が頑張らなきゃね!うん!」
成はポカンとして由奈を見つめて思わず言った。 「どうしてそこまで・・・見ず知らずの世界の人たちにそこまでする必要ないじゃないですか!」 由奈はうーんと上を向いて考えると、笑って答える。
「私の世界のとある地域の言葉にさ、[いちゃりばちょーでー]って私の大好きな言葉があるんだ。 その言葉の意味はね?[一度会ったらみな家族、一度でもあった人には家族だから助け合いなさい] って意味の言葉なんだけど私はね、その言葉をとっても大切にしてるの。他人の事だから関係ないんじゃなくて、 この世界はもう私の生きる国で家族の人々、だから黙って見過ごすなんて私の魂が絶対に許すわけにはいかないって騒いでる、それだけだよ。」
「死ぬ確率の方が高いんですよ?いいんですかそれで・・・。」 「本望だよ、今ここで何もせず見捨てて生きるぐらいなら、胸張ってやれるだけやって死んだ方がよっぽど気持ちいい。」 「はー・・・まったく仕方ない人ですねほんと。では、私も付き合いますよ、友人として!」 由奈は唖然とした、何を言ってるんだろうこの人は、そう思った。 「死ぬかも知れないって言ったのは成だよ?何を言っているの?」 ふーと、1つ大きなため息をつくと成は笑った。 「だってほっといたら、由奈さんは1人で戦って1人で死ぬんでしょう?冗談じゃないです。 由奈さんは、シェイラで出来た初めての大切な友達です、勝手に死んでもらっては困るんです。 だから由奈さん、私の命も一緒にかけてください!1人で死にになんて絶対に行かせませんよ! 最終的にこの国の再生と奴隷解放を目指して、この闇の国に光の国を作り出しましょう!」
「ったく、成って結構強情な娘なんだね。」
「由奈さんだけには言われたくないですよ。」
「じゃあ、行こうか打倒政府に向けて。」
「え?どこへです?」
「さ・・・さぁ?」
次回「小さな世界の構築」
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