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作品名:言霊 作者:狸塚ぼたん

第7回   壱-3
壱-3

 着替えてる間に自己紹介。

あたし、琴音って言います。

人間に化けてこの世界で日常生活を送っている化け狸です。

って言っても、ピンと来ないよね。

うーん、どこから説明しようか。

 まず、この世には妖っていうものが存在してて、普通は妖界っていう妖だけが住む異世界にいるの。

化け狸のあたしは、色々あって今は人間界で生活してる。

それにしても、やっぱり平安期と比べて、こっちの世界で生活する妖の数はかなり減ったなあって思う。

パパから聞いたけど、もうこの時代の人たちにとって妖なんて漫画とか小説とかに出て来る程度で、ほとんど架空のものとされてるらしい。

あたしはちゃんとここにいるのに、存在してないことにされるのはちょっと寂しいと思ったりもするけど、人間にとって妖を忘れることはきっと、人間自身だけでなく妖にとっても良い事なのかもしれない。

 あ、平安時代の記憶があるのは、あたしが平安時代からずっと生きてたからってわけじゃない。

人間でいうと歳は十六。

勿論、付喪神みたいな長寿の妖もいるけど、あたしは平安後期に一度死んでるの。

妖って生き物は、自分が生きてきた記憶は生まれ変わってもずっと残ってるものらしい。

ただ、あたしはちょっと例外で、自分が死んだ時の記憶があんまりない。

普通はちゃんと残ってるものらしいんだけど、相当ショックな死に方をしたのか、死んだ時の記憶がすっぽり抜けてる。

因みに、あたしはまだ一回しか死んでないから、前世の記憶しかないけど、静っていう座敷童子の妖は何回も生まれ変わってるみたいで、時々細かいところで記憶が混ざっちゃうことがあるみたい。

死んでから生まれ変わる期間は様々で、死んでから何日後なのか、はたまた何年何十年何百年何千年後なのかは分からない。

あたしの場合、死んでから九百年以上すっ飛ばしたみたい。

 妖についてはとりあえずここまで。

あたしのことについては簡単にまとめちゃうと、琴音っていう化け狸で性別はメスで歳は十六。

見た目の特徴は肩までの髪と目が茶色。

これくらい。

 さて、着替え終わって寝癖との格闘も終わったから、二階から居間がある一階に降りる。


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