弐-24
射撃場の片づけを終えて、またコンクリートの道を通って帰る。
どうでもいいけど、このコンクリートの道、硬いし冷たいし裸足にはかなりきつい。
それは清才様も同じはずなのに、清才様は顔色一つ変えずにどんどん進んでいく。
「君の不安は拭えましたか」
「え、ああ! はい! やっぱり清才様は凄いってことが分かりました!」
清才様の顔色を伺っていたところで急に問われたので、たじたじになってしまう。
でも、心臓が弱くてもあんなに正確に銃が撃てるなんて、やっぱり清才様は凄い。
平安の頃から変わらず、清才様はあたしが尊敬する方だ。
きっと、これからもずっと。
「そうですか」
清才様は笑顔だった。
笑顔なんだけど、気のせいかまるで仮面のように感情のない笑顔に見える。
梯子を先に上った清才様の助けを借りて地上に出た。
押入れから出ると、畳の心地よい感触が足の裏を癒してくれる。
すると、
「……案外早かったですね」
清才様は隠し通路の穴を塞ぎながら呟いた。
その呟きの意味はよく分からない。
もしかして、とある部屋から漂ってくるこの匂いと関係してるのかもしれない。
あたしは誰よりも早くその人に会うため、嗅ぎなれた匂いがする方へ走り出す。
「龍壬さん!」
客間らしき場所には、軍服を着た龍壬さんがソファにふんぞり返っていた。
その軍服は、薙斗があたしと初めて会った時に着てた物に似ていた。
テーブルには、涼香が出したらしきお茶が入った湯呑が置かれている。
「琴音! 無事だったか!」
あたしを見た途端、龍壬さんは立ち上がり両手を広げてあたしを迎え入れてくれた。
あたしは迷わずその腕の中に飛び込む。
「龍壬さん! 龍壬さん龍壬さん龍壬さん! 会いたかったよお!」
「よしよし、よく頑張ったな」
龍壬さんは、大きな手の平であたしの頭を昔と同じように撫でてくれた。
あれ、でも龍壬さん、確か行方不明だったんじゃ?
「龍壬さん! 静は? 静は無事? 一体何があったの? どうして行方不明なんかになってたの?」
あたしの質問攻めに対して、龍壬さんは苦笑する。
「一つずつ質問してくれ。静は無事だ。今は俺たちと一緒にいる」
「……俺たち?」
龍壬さんの言動に疑問を覚えるも、龍壬さんにきつく抱きしめられて何も言えなくなってしまった。
「感動の再会を邪魔して申し訳ありませんね」
部屋の出入り口から清才様の声がする。
「ああ、本当に邪魔だよ」
龍壬さんがそう言うと、どこからともなく大勢の人たちの走るような足音が家中に響いた。
そして、その足音は扉や窓をぶち破り、数秒でこの部屋に集まる。
あたしは顔をずらして清才様の方を見た。
と、龍壬さんのと同じ軍服を着た人たちが、清才様を囲って機関銃の銃口を向けている。
「んー! んー!」
近くで聞こえる、唸るような声を頼りに視線を辿ると、手足を縄で拘束されている涼香がいた。
その上、口は白い布を噛まされ喋られないようにされている。
「清才様! 涼香!」
あたしは叫び、清才様の方へ行こうとすると、龍壬さんは腕の力を更に強めた。
龍壬さん……?
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