20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:言霊 作者:狸塚ぼたん

第23回   壱-19
壱-19

「お前に、清才の子孫を探して欲しい」

「へ?」

 全然予想してなかった台詞に、思わず間抜けな声が出た。

えっと、清才様に会えるのは嬉しいけど、どうして清才様を探さないといけないんだろう。

「組織の歴史書によると、元祖共存主義の陰陽隊の創造主の名は清才。お前が平安期の前世で仕えてた男と同じ名前だ」

 ――一瞬、思考停止。

「……ええっ!?」

 思わず立ち上がって、身を乗り出した。

あたしが死んでから清才様のその後をあたしは全く知らないから、これは初耳。

「嘘でしょ?」

「間違いない。ちゃんと清才の手紙もレプリカだが、本部のどこかに保管されていて、その手紙にはお前の名前も書かれてる。そのせいで、陰陽隊にはお前の名前は知れ渡っちまってんだ」

 静は知ってたのかと思って静の方を向くと、静はこくんと頷いた。

「知ってた。それに清才の子孫のことも知ってる。でもパパに口止めされてたから言えなかったの。言ったら絶対に琴音は清才の子孫を探しに行ってたでしょ? 組織に関わらせたくなかったパパは、そのことも隠そうとしてたの」

 組織に関わらせたくなかったからって、清才様のことまで隠さなくたって!

でも、パパの判断はあたしのことを心配してくれてのことだろうから、口には出さない。

あたしはぼすんっと頬を膨らませて椅子に腰を下ろした。

「静はその子孫がどこにいるのかも知ってるのか?」

 こう静に問う龍壬さんは、静の様子を少し伺ってるように見えた。

なんでだろ、それに少しだけ違和感を覚える。

「さあ、今どこにいるのかは分からない。どうして清才の子孫の場所が知りたいの?」

 静はすっと目を細めて龍壬さんを見つめた。

「創造主の子孫であればそれなりに位は高いだろうし、上に直接掛け合って貰えるかも知れない」

「なるほど。さすが龍壬さん」

 あたしはぽんっと手を叩いて納得するけど、静はまだ少し納得できてないようで表情は硬かった。

しかし、その表情は瞬時に驚愕へと変わる。

「術者……!」

「えっ?」

 カーテンが閉まっている窓の外を、人影が二、三人横切った。

少なくとも五人はいる。

「囲まれる!」

「こっちだ!」

 慌てて荷物を持ち、龍壬さんに手を掴まれて裏口へと移動する。

まだここには人がいないみたいだった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 8718