壱-19
「お前に、清才の子孫を探して欲しい」
「へ?」
全然予想してなかった台詞に、思わず間抜けな声が出た。
えっと、清才様に会えるのは嬉しいけど、どうして清才様を探さないといけないんだろう。
「組織の歴史書によると、元祖共存主義の陰陽隊の創造主の名は清才。お前が平安期の前世で仕えてた男と同じ名前だ」
――一瞬、思考停止。
「……ええっ!?」
思わず立ち上がって、身を乗り出した。
あたしが死んでから清才様のその後をあたしは全く知らないから、これは初耳。
「嘘でしょ?」
「間違いない。ちゃんと清才の手紙もレプリカだが、本部のどこかに保管されていて、その手紙にはお前の名前も書かれてる。そのせいで、陰陽隊にはお前の名前は知れ渡っちまってんだ」
静は知ってたのかと思って静の方を向くと、静はこくんと頷いた。
「知ってた。それに清才の子孫のことも知ってる。でもパパに口止めされてたから言えなかったの。言ったら絶対に琴音は清才の子孫を探しに行ってたでしょ? 組織に関わらせたくなかったパパは、そのことも隠そうとしてたの」
組織に関わらせたくなかったからって、清才様のことまで隠さなくたって!
でも、パパの判断はあたしのことを心配してくれてのことだろうから、口には出さない。
あたしはぼすんっと頬を膨らませて椅子に腰を下ろした。
「静はその子孫がどこにいるのかも知ってるのか?」
こう静に問う龍壬さんは、静の様子を少し伺ってるように見えた。
なんでだろ、それに少しだけ違和感を覚える。
「さあ、今どこにいるのかは分からない。どうして清才の子孫の場所が知りたいの?」
静はすっと目を細めて龍壬さんを見つめた。
「創造主の子孫であればそれなりに位は高いだろうし、上に直接掛け合って貰えるかも知れない」
「なるほど。さすが龍壬さん」
あたしはぽんっと手を叩いて納得するけど、静はまだ少し納得できてないようで表情は硬かった。
しかし、その表情は瞬時に驚愕へと変わる。
「術者……!」
「えっ?」
カーテンが閉まっている窓の外を、人影が二、三人横切った。
少なくとも五人はいる。
「囲まれる!」
「こっちだ!」
慌てて荷物を持ち、龍壬さんに手を掴まれて裏口へと移動する。
まだここには人がいないみたいだった。
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