「ねえお爺ちゃん、「よい子が住んでるよい町は〜」って変だと思わない?」 「うむ、「歌の町(*勝承夫作詞・小村三千三作曲)」のことかい?」
孫娘の陽菜ちゃん、歌詞について色々考え込んでしまう癖があるようだ。
「「よい子が住んでる」としても一概に「よい町」とは言えないと思うんだ。 ・・・悪い子が住んでたってよい町はよい町。逆によい子が悪い町に住むことだってあるだろうし。」
「要するに、「よい子」と「よい町」には相関関係がないと言いたいんじゃな。」
「そうなんだよ。 それに根本的な問題として、「よい子」や「よい町」の定義・・・これが分からない。論理性に欠け、多分に感覚的。」 「お主、可愛い顔して言うことがキツイのう。」
「でもそう思わない?次に続くフレーズだってサ、「楽しい楽しい歌の町」ダヨ。 ・・・なんで「楽しい楽しい」=「歌の町」って決めつけるんだろう。」 陽菜ちゃんは歌が大の苦手。とても「歌の町」が「楽しい」とは思えないのだ。
「陽菜ちゃん側の事情もあるようじゃな。・・・ところで、「歌の町」といきなり言われてものう。そんな町、行ったことも聞いたこともないぞ。」
「ああそれは、次のフレーズで説明されてる。 ・・・「花やはちょきちょきちょっきんな かじやはかちかちかっちんな」 ちょっきん、かっちんの音が「歌」で、 花や、かじやが「町」の正体ッ!」
「歌の町」はちゃんと定義されていた。・・・「歌の町」が「楽しい」理由は、謎のままだが。
「凄い!詩を読みこんでおるではないか。」
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「 一番、 よい子が 住んでる よい町は・・ 二番、 よい子が あつまる よいところ・・ 三番、 よい子が 元気にあそんでる・・ 四番、 よい子の おうちがならんでる・・
・・・どうじゃ、なんか気が付かないかい?」
「そういえば、だんだんテンションが下がってゆく・・・というかァ〜、マトモになってゆくような。」
「そうじゃろ。一番、二番の構えた言い方。それは歌の生い立ちに関係しておるのよ。」 「??」
この曲は昭和23年に児童福祉法が制定された時の記念作品だった。 第一条 すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、 且つ、育成されるよう努めなければならない。 ○2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護され なければならない。」
「法の精神を受け、健やかによい子が生まれ育つ理想的な環境、それが「よい町」なんじや。」
「大人の事情があったんだね。・・・でも、あたしゃ三番四番の方が好き、自然に伝わってくるから。」 「だだ、インパクトが弱いかの。」
「「よい子が住んでるよい町」??? なんじゃそりゃァ〜・・・みたいなトコ狙ってるんだね。」 「それがなければ、曲が有名になることもなかったじゃろうテ。」
「陽菜にお爺ちゃん、ご飯ですよゥ〜」 キッチンから洋子さんの声が聞こえた。
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