「あのね…覗きがいると思うの…」
「覗き?!」
今は、昼休み。
いつものメンバー+凪+キーでご飯を食べている。
そんな中、堅葵からの相談だった。
相談の内容とは、部室に最近覗きががいるということだった。
堅葵はバレー部に所属していて、その部室に現れるらしい。
「ほんと、最近になってなの。物がなくなったり、触られた感覚はあるんだけど、振り返るとだれもいなくて…」
堅葵が状況を説明している中、俺と多分凪は同じことを考えていたに違いない。
「幽霊だと…思うの…」
そう、このことだ。
あの鳴らない電話の騒動から、俺はその幽霊やそういう系の物に少し敏感になってしまったらしく、こういう話を聞くと、すぐにそういうことを思ってしまう。
悪い癖になりそうだ…
「凪…これって…」
俺がそう凪に話しかけると、凪はそう遠くないところを見つめて、何か考え事をしていた。
「被害を受けているのは、お前一人か?」
凪は堅葵にそう問う。
多分私だけ、と返事をすると同時に再び凪は考え出す。
俺たちは凪のかんがえていることが一切わからない。
一人か集団を狙っているかでどう違うのかも俺はさっぱりわからない。
俺たちはこの沈黙の中、凪の次の言葉を待った。
「多分、俺と同じような能力を使える人間だ」
凪がそう言い放つと、皆キョトンとした顔をして見つめた。
凪の能力は、自分が幽霊になると言うものだ。
幽霊というのは霊感がないと見えないため、それで透明人間を作り出せると言うわけだ。
でも、霊力というのはそう簡単に手に入れれる力ではない。
霊力というのは霊感とは全く違う力であり、霊感があれば霊力を使えるというわけでもない。
霊感とはいうのは単に、幽霊が見えるというだけだが、それを違う利用の仕方をしたのが霊力だ。
つまり、霊力は霊感の完全上位互換。
違う利用の仕方をすると、俺や凪、キーのように能力を使えるのだが、俺はまた別物らしい。
どう考えても、あの短期間で使えるようになるのも絶対にできないことだし、それに能力が意味不明…
俺の能力には凪ももうお手上げらしい。
そんな謎だらけのこの世界で、自分の能力に気づき、自分で鍛錬をして、使えるようになるなんて…
「そいつはとんでもない奴だな…」
「あぁ…そうとうキレるぞ…」
凪が関心をして、俺が納得をしている時、蓮に新たな疑問が生まれたらしく、質問を投げかけてきた。
「なぁ、凪はなんでその力を手に入れたんだ…?」
俺はこの疑問は出なかった。
もう知っていたからだ。
そう、凪はそういうお祓いとかをしている家なのだ。
だから、人よりもそういう知識を持っていて、霊力を使えるという。
でも自分はあまり力が強くないと、弱音をはいていた。
俺の力が羨ましいと何度も言ってくる。
凪がそう俺と同じような説明をすると、蓮はさらに疑問を投げる。
「じゃあ、そいつもそういう家のものじゃないのか?」
「それは絶対に違う」
確かに、と思った俺の言葉にかぶせて凪が真っ先にそう告げる。
「こういう目的で俺たちは能力を使わない」
あぁ…納得。
俺は3回頷き、本題へと話を戻した。
「それで…犯人の目星はついているのか?ここまで分かってるんだったら、簡単に見つかるんじゃないのか?」
俺はそう思ったが、凪は決して首をたてには振らなかった。
「簡単なもんじゃない。相手は人間…それにめちゃくちゃ頭がいいときた…多分誰にもわからないようにしているはずだ…」
悪質にも悪質にも…なんてやつだ…
犯人の行為に俺は拳を握りしめ、地面へと叩きつける。
この拳の痛みは、堅葵の悲しみなのか…?
悔しさに悔しさが積もり、俺の拳の痛みはさらに増す。
「それに…俺たちは男だ。女子の更衣室 なんかに入れないぞ…?」
確かにそうだな…と俊樹と蓮が笑う。
そんなことしたら俺たちが犯人扱いされるかもしれない。
それだったら…
と、考えを奏が提案をしてくる。
「…っていうことは、霊が見える女子のじゃなきゃダメだってことだよね…」
そう。俺も凪をそれを考えていた。
でも、そうなるとこの中で霊が見える女子というのは…必然的に。
「キーちゃんだね!」 「キーだな」
堅葵と凪の声が重なる。
「いや…待てよ…!」
とっさの判断でその考えを俺は否定をしてしまう。
そんな危険なことをキーにさせていいのか?
「危ないよ…相手は人間で頭がいいんだろ…?キーも何かされるかもしれない…」
みんなの空気が一気に静まる。
それもそうだ…俺一人だけの反対なんだから…
下をうつむく俺に誰もはなしかけようとはしなかった。
沈黙が続き、空気がさらに重くなる。
俺はキーにこんな危険なことをさせていいのかわからなくなっていった。
「私、やってもいいよ。大丈夫!」
キーの返事に俺は素早く返事を返す。
「本当に大丈夫か…?」
「大丈夫!私もみんなの為になりたい!」
本当に大丈夫なのだろうか…?
でも…本人が言っているから大丈夫なのかもしれない…
「キーが大丈夫なら…でも無茶はするなよ…」
「うん!頑張る!」
キーが頑張りたいと言っているんだ。
今回は許してやることにする…
* * *
「キーちゃん、大丈夫?」
「うん!大丈夫」
私は女子高生に化けて、更衣室にたつきんと一緒にはいった。
この能力は本当にいろいろな物に化けることができるから、使い勝手がいい。
まだ犯人と思われる人ははいってきていないみたい…
「いまからどうしようか…?」
たつきんが暇そうにしている私を見てそう呟く。
たつきんも少し心配そうに下を向く。
たつきんは少しの間…いや、少しの間でもこの痴漢野郎に嫌なことをされてきた。
毎日現れるし…元気をなくしているとおもう。
私たちに会うときは元気にか振舞っているが、本当は心に傷を負っていると思う…
私が少しでも元気にしてあげないといけないかな…?
「たつきん…」
私は部屋の中にあるベンチから立ち、たつきんに近寄った。
首を傾げて、面白い顔でこっちを見ているたつきんに私はこちょこちょをした。
「ちょ…!え?なに!?やめ…!」
頑張って抵抗するたつきんを押しのけて、こちょこちょを繰り返す。
大げさに笑うたつきんは少し元気になったかな?
こちょこちょをしているときに、そんなことを思っていると、少し不思議な音が私の耳に聞こえてきた。
『カシャ…』
何かカメラのシャッター音のような音…
「どうしたの?」
もうその声も聞こえず、私はその音の元を必死に探した。
…あった。
それは小さくも大きく、犯人の物だと一瞬で判断した。
「カメラ…?」
私が呟くと、ほぼ同時にたつきんが悲鳴をあげ、私の元に駆け寄る。
『逃げるなよー』
聞こえた。私には聞こえた。
男の声…でも姿は見えない…
いつの間に入ってきたかもわからない…いや、もしくは初めからもうこの部屋にいたのかもしれない…
「たつきん!!」
私は変態犯人から守ろうと、一歩前に出た。
姿は見えない。でも声は聞こえる。
左、右…気配はなんとなくだけどわかる…
ユラユラとゆっくり接近してくる彼の気配と声を頼りに手を1つ出した。
…あたった。多分顔に…
私はもちろん驚いたが、それ以上にかれも驚いたはず…
『み…見えるのか…??』
と、最後に聞いたその声は私の耳にしっかり届いた。
気配は一瞬にして宙に消えて、私とたつきんがだけがこの部屋に残った。
|
|