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作品名:怪奇高校生 作者:シン

第7回   7
窓から差し込む光がとても眩しい。

今が何月何日で何時なのかも全くわからない。

「やっとおきたのか」

右を向くと、そこには椅子に座ってこちらを見ている凪の姿があった。

「俺は一体…なにがどうなってるんだ?」

凪は困ったような顔をして、俺に隣を見るように仕向けた。

首を傾げながらその方向を見ると、そこには朝日の光に照らされて、奏が座っていた。

それを見た瞬間、俺は嬉しくてたまらなかった。

なんで助かったのかは全く分からなかったが、これだけはわかった。

奏は助かった。そう、これだけは。

「この人が助けてくれたの?」

奏は俺に凪の方を指差して、そう訪ねた。

でも、俺はなんで奏が助かったのかもわからない。

多分、凪が全部したのだろう…

だけど凪は、「すべて神威が助けた。俺はなにもしていない」

と言った。

凪のこの言葉により、俺はもう何が何だかわからなくなってしまった。

「どういうこと?」

俺のその問いに、凪は答えれなかった。

一つの謎が、また多くの謎を呼んだ。

まぁ…奏は助かったから、俺は大丈夫
なのだが…

大丈夫なのだが…この事件はまだ解決していない、そういう気分だった。

* * *

久しぶりに学校に登校すると、学校のともだちがたくさん心配してくれていた。

奏も無事復活して、今日は一緒にとうこうをしたくらいだ。

残りの3人も奏の生還に涙をながすほどだ。

感謝しても感謝しつくせない、なんて言われて、俺はとても嬉しかった。

俺はもう孤独じゃない…

あのキツネも孤独じゃなくなっただろうか?

あのときの記憶はまだ残っている。

でも途中で途切れている…

大人たちに囲まれて、キツネを守りながら、自分の気持ちをぶちまけたところで記憶は終わっている。

あの後どうなったかも俺はわからない。

「どうなったのかな…」

腑に落ちない気持ちが多い俺は、学校が終わると、凪の元へ急いで向かった。

あのとき見たあの出来事は忘れることはないだろう。

でも、あの出来事が何か関係していると、直感的に俺はそう思ってしまう。

「お前が思うんだったら、そうなんじゃないのか?」

凪の家について、即刻そのことをはなしたら光の速度でその返事が返ってきた。

あまりにも適当な返事に俺は不意を突かれてしまう。

「いや…でも、あれは夢だったのかもしれなくて…」

「あれは、お前の霊能力だ」

その言葉に、俺の神経がピクリと動く。

「お前は、多分…霊力の痕跡をたどることができるんだろう…」

簡単に言うと、霊力の記憶、力の原点を見ること。

つまり…タイムスリップ。

痕跡を辿るので、自分自身がその場所にいたということになるらしい。

俺はこのことには全然理解はできていなかったが、俺の能力で奏が助けてられたということは理解をした。

凪は、俺の見たキツネのことについても話してくれた。

キツネが昔この地域、この町にいたらしく、かつて大水害を引き起こしたらしい…と。

もうこの時点で、あのキツネと凪の話しているキツネが俺の中では一致した。

「そのキツネは、今もこの町の人を恨んでいて、呪い続けている」

複数あった歯車が、一つになり、大きな歯車が幾つも重なり、動き出した。

恨んでいるのは、自分の気持ちが伝わらず、大人たちに、町の友達たちに理解をしてもらえなかったから…

じゃあ俺は…

「おい、どこに行く!」

凪の家を飛び出して、俺は走り出した。
声はみみにはいっていたが、それに答えている暇なんてなかった。

止まっていた時間が動き出した…

俺はあの神社にきた。

すると、あの長い階段はなく、あのときと同じように、本堂がチョコンとあっただけだった。

「やっぱり…あれはここだったんだ…」

長い階段がないということは、未来が変わっているということだ。

俺はあのときのように本堂に近ずく。

「あ…」

本堂にもう金箔などないのだが、一箇所だけ指でなぞった跡があった。

過去は未来に直結している。

あのときがあれば、このときはない。
このときがあれば、あのときがある。

俺はこの町の過去を変えてしまい、結果、未来を変えてしまった。

それがいい方向になっていればいいのだが…

そう思い、風に流れる林の音を感じ、上を見た。

すると…
上から何か黄色物体が落ちてきた。

「あぁ…なんかデジャヴ…」

おぶぅ…と変な声を上げて、俺はその場に倒れた。

近くにある落ち葉がその場に巻き上がる。

「久しぶりだな!」

「ふはは…全くだ」

あの少女だ。

いままで元気にやってきたらしい…

凪の言っていたように、この町の人を恨んでいたからこそ、『鳴らない電話』のようになったのだ。

あの話の元凶は、このキツネで、この町の人への復讐が目的だった。

でも、その原因を俺が無くしたんだ。

あの場で俺がキツネと人間との間を和解に導いた。

だから、キツネは奏を呪う必要がなくなったため、呪いは解けた。

俺はそう解釈した。

「もう、一人じゃないぞ」

俺は少女に聞こえないようにそうつぶやいた。

すると、少女はニカっと笑い

「お前もな!」

と、大きな声で返事をした。





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