「おい!起きろ...!どうした?!」
急に神威が倒れて俺は少しパニックだ。
まだ開始はしていない...それに、霊力も奪っていない。
奏の横に寝かせてみる...
場所を変えても変わらないと思うのだが、とりあえず2人ともまだ息がある。
「何がどうなってんだ?」
神威の体に霊力的何かが起きているのだとは思うが、それが何かさえも俺にはわからなかった。
「無事で...どうにか...」
俺は祈っていた。 そうするしかなかった。
* * *
1人、草原に立つ。
草が風で揺れる音...なんだか心が落ち着く。
人は...俺だけ。他には誰もいない。
「ここは...どこだ?」
いつの間にかここにいた俺は何が起きているかもわからない。
考えるとワープをしてこの場に来たとしか思えない。
「痛みは...?!」
そんなことを思い、頬をつねると痛みが全身を駆け巡る。
痛みがあるということは、夢ではなく現実ということだ...
夢なら少し納得がいくとは思っていたが、現実となるとますます意味がわからない。
「とりあえず...歩いてみるか...」
そう思い、少し歩いてみることにした。
町外れの小さな草原だったらしく、少し歩くと1つの町についた。
デジャヴのような感覚に襲われる... その町は、そう...俺たちの町。 一瞬でそうわかったのは、町の道、配置...そういうのが完全に一致していたからだ。
俺は歩いているうちに、とあるところに吸い込まれるように歩いた。
「ここ...あの神社?」
気分転換と思っていたのだが、とてつもなく嫌なところに来たと自分でも驚く。
周りの木は少ししか生えておらず、あの階段もない。
本堂がポツンとあり、後ろに少し林がある程度...
それどころか、家が少ない...
道は俺たちの町と同じなのだが、家が転々としかない。
その家も、なんだか昔の家みたいで、タイムスリップをして昔に来た感じがする...
周りを1周見渡し、本堂に近寄る...
「まだ...新しいな...」
本堂は作られたばかりで、木は新しく、金箔がついている。
本堂に少し触り、金箔が手に着く。
綺麗に塗られていて、とても輝いている。
俺の指が少しキラキラしていて、本堂のキラキラが少し剥がれてしまった。
「ここだけ剥げてしまったな...」
金なんてとても高価だ。そのため、少しだけしか塗られてなかったようだ。
でも...こんな小さな本堂に金箔か...とそんなことを思っていると、大人の声が数個聞こえてきた。
「あっち行ったぞ!」 「捕まえろ!!」
その威勢のいい声に驚き、後ろを振り向くと、顔に何かが飛んできた。
その飛んできた物とともに、俺は地面に倒れた。
近くにあった落ち葉が巻き上がる。
「痛った...」
頭から胸へ移動している謎の物体を上に持ち上げてみる。
そこには頑張って俺の手からどこかに行こうと踏ん張っている黄色い何かがいた。
そう...こいつがキツネということに気がつくのに俺は数秒かかった。
時間差の出来事だ。
「き....キツネ?!」
キューという鳴き声を出しながら、手を離れようともがく。
「こっちだ!!」
さっきの大人の声と同じ声が聞こえ、こちらに来ることを察した。
とっさの出来事にどうしていいかわからなくなったが、とりあえずキツネを俺の服の中に入れ、平然を装った。
「少し苦しいかもしれないけど、我慢してな...」
そう言い残して、頭を軽く撫でた。
さっきとはうって違って落ち着いたようだ。
「ここにキツネは来なかったか?」
大人の1人が俺にはそうたずねる。
手には銃を持っている... 多分、このキツネを狩る気なのだろう。
「いえ?見てませんが?」
俺がそう答えると、なんの返事もなく、全員1人の号令でどこかに行ってしまった。
キツネというのは昔から霊力を持っていると言われている。
いろいろな怪奇現象に関わっているので、そういう災いが起きる前に殺しておこうということなのだと思う...
1つため息をついて俺も落ち着いた後、キツネを服から出してあげた。
「もう大丈夫だよ」
俺はそういって逃がしてやろうと思ったのだが、キツネは逃げる気配がなく、こっちを向いて俺の胡座をかいて座っている足の上にちょこんと座っている。
目を数秒合わせると、キツネはなんだかコクコクと頷き、足から出て少し前に出た。
すると、いきなり周りの落ち葉が巻き上がり、キツネを包み込んだ。
太陽の光とともに眩しい光を放ち、数秒すると、キツネの体を包み込んでいた落ち葉が吹き飛んだ。
あまりの眩しさと、風の勢いに、俺はつい目を閉じてしまう。
数秒たって目を開けると、そこにはキツネではなく、小さな女の子が立っていた。
「先ほどは助けていただき、有難うございます」
もう、現実の変な場所に勝ってに来ていて、いきなりこんなマジックみたいな物を見せられて、余計意味がわからなくなった...が、1つだけわかったことがあった。
マジックじゃない、これは霊力だ。
「霊力...」
俺はさらなる深みに入っていった。
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