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作品名:怪奇高校生 作者:シン

第3回   3
夜中になっても家に帰らない。

いや、帰れない...

先ほど出会った東雲凪の家に入ったところだ。

時刻は...午前3時。

閉じようとする重たい瞼を必死に開きながらも家に入ると、この家の大きさに俺はびっくりして、さっきの出来事なんかを忘れさせるほど眠気が覚めた。

「お前の家...広いな」

クスクスと笑うこいつ...東雲凪には何か違和感を覚える。凪の影には何か違う人の影があるような...そのような感じがする

「なんで笑ってんだよ」
笑い声に無性に腹が立ち、そうたずねる。
こいつは階段を登りながら後ろを向き、また不敵に笑い、また前を向き歩き始める。

この行動に俺はさらにイライラが増す...
まぁそれも抑えるが...

階段を登りきるとすぐ左に曲がった。

「おら、ここだ。入れ」

こいつの部屋らしき場所に入り、すぐに椅子に座らせられた。

部屋の中は、封印やら、霊的な物。
明らかにあっち系なものが多い...

こいつも霊感があるのか?

「さて、再び自己紹介をしよう。俺は東雲凪だ」

声は少し高い...
もう少し高いと俺は聞きたくない声になってしまうのだが、まぁそんなことはどうでもいい...

...今、この状態がありえないのだ。

幽霊かと思ったら人間で、ついてきたらめちゃくちゃ大きな家に連れ込まれ、部屋まで入って自己紹介をされた。

もう、いたるところにツッコミをしたいところだ...

「さぁ!君の名前は何かな?まぁー言わないでも俺はわかってるけどねぇー神威君」

この小さな間にもこいつに心を見透かされているようで...嫌だ...

「お前は何者だ?」

恐る恐る俺が聞くと、こいつは席を立ち上がり、フードを被った。

まただ...さっきと同じ感じ...
人とは違う力を持った幽霊...
そういう風に思ってしまう。

「お前なんて言ってさぁ...凪でいいんだけどね...」

一歩一歩俺に近づいて来るにつれて、首を誰かに締め付けられたような感覚に襲われる...

それに耳鳴りも。

耳鳴りは幽霊が近づいてきたことが一番わかる。

霊感が強いという人ほどその感覚には鋭い。

耳の中を抉るような音...少し痛い...

近づけば近づくほどその痛みは増す。

「幾つか質問をしていいか?」

「はいはい、なに?」

凪はフードをとり、霊のようになるのをやめ、俺の話に耳を貸した。

「その幽霊のようになっているのはなんなんだ...?」

いっときの間があり、甲高く笑う凪。
なにがそんなに面白いのか俺には理解できない。
よく笑う人だ。

お腹を抱えながら、目から涙を流すほど笑ったところで俺に返事をした。

「お前は、本当に何も知らないな...霊力も利用していないのか?」

霊力...?

こいつは何を言っているんだ?

「霊力だよ。霊力ー」

俺の頭上に複数のクエスチョンマークが浮かび上がる。

またここにも疑問が生まれた...

霊力とはなんなのか?
そして、霊力と霊感の違い。

目の前に立ちはだかるこの人物を俺は睨みつける

まぁそんなことをしても変わらない...というよりもこっちが惨めになる。

今までにない知識を必死に考えるのは無駄だと考えた俺は、もう全てを話してもらうことにした。

* * *

霊感。
神や仏が乗り移ったかのようになる、人間の超自然的な感覚。あるいは、霊的なものを感じ取る心の働き。

つまり、人間の霊が感じ取る不思議な感応をいうらしい。

そして霊力。
霊の力。また、不可思議な力のことを指す。

つまり、霊感は感じ取る力なのに対して、霊力は不可思議な力のことを言う。

不可思議な力なんていうのは、怪奇現象。例えばポルターガイストなどが有名だろうか。

そういった現象を霊ではなく、人間が霊力を利用して引き起こすこともできるという。

俺はずっと昔から霊感。感じ取る力だけしか使ってこなかった。

霊力の存在なんても知らなかったからだ。

ならその霊力を使えば...奏も救うことができるんじゃないか...?

雲から太陽が見えてきた。

希望の光が俺には見えたんだ。

その霊力とやらを残り3日くらいで習得して...

奏を救う力を身につければ...どうにかなる...

そう思い込んでいた。

でも現実は非情だ。
思い通りにならないことがほとんどだ...

そう。奏を救えないと言う事実。
その事実を俺は受け入れたくなかったが、でも理由が2つあるらしい。

まず一つ目。
霊力を身につけるのにはかなりの期間が必要だということ...

残り3日じゃ到底無理だと言う...

「3日じゃ無理なら...奏を救えないじゃないか...」

つい、心の声が漏れてしまう。

「俺が解いてやってもいいが、そんなに力が強くはないから、上手くいくかはわからない...それに...」

そしてこの後に話したのが2つ目だ。

「奏さんの呪いで死ぬ時間の問題だ」

「死ぬ...時間...?」

もうこの時にはわかっていたというと嘘になるが、俺はもう勘づいていた。

時間なんて残されてないと。

「奏ちゃんの霊感はないに近い。だから霊力なんてほぼないに等しい。だから、この呪いに耐えられるのも...残り1日くらいだ」

一週間で死ぬのは目安で、体がもたなかったらすぐにでも死んでしまうらしい。

それを聞いた途端、俺は全身の力が抜けて地面にヘタレ落ちた。

太陽が隠れた。

自分の無力さに、この絶望感を俺は味わってた。


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