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作品名:怪奇高校生 作者:シン

第15回   最善策
「いいか、この殺人事件はものすごく、この学校との関係があるんだ」

凪の推理を1から聞くために教室へ戻り、紙とペンを取り出して簡単な地図を書いて話を始めた。

「昨日の殺人事件はこの場所。その前はここ、そして…」

…?その前?

おれはその素朴な質問をすぐに投げつける。

「そう、この事件は前があるんだ、数日前、ある川で死体を見つけてな、すぐに警察に通報したんだが、それはもうバラバラで、人だと判断するのにも数秒かかったくらいだ」

凪は息を吸い込み続ける。

「一目でわかった。犯人は霊力を持っていると…」

「その能力はとても戦闘的な能力は…俺たちじゃ太刀打ちできない…」

凪の言葉を抑えて、言った言葉はどうやら正解らしく、凪は不敵に笑う。

「だから、あいつに戦闘で勝つのはほぼ不可能。俺たちに残された選択は一つだ」

ゴクリ、と喉を唾が通る音が教室中に響く。

「お前の能力で瞬間的に相手の能力を無力化してその動揺のうちに捕まえる、これが最善策だ」

なるほど、と俺は頷くが、できるかどうかの自信は一切なかった。

能力を無効化にできるかもわからないし、その前に一瞬で殺されるかもしれない。

失敗したら死んでしまう。

もし道で出会ったとしたら…

生きるためにこの最善策を使うのか、殺されるのを待ち、何もしないのか…

俺の覚悟はもう固まっていた。

「あぁ…それで?関係はなに?」

「あぁそうだった…忘れてたな」

そう言いつつ、凪は頭に用意していたセリフを俺に語る。

「男ということと、殺された全員がこの学校の関係者、生徒の親だったりするんだ」

俺はその言葉を鵜呑みにはできなかった。

男、というのは偶然で片付けることはできるだろう。

でも、偶然この学校の関係者というのは言えない。

その確率はずっと低い話だ、狙っているとしか思えない。

この真実はタダの偶然では片付けられない。

なぜその霊能力者がうちの学校の関係者を狙っているのだろうか…

幾つかの疑問を残したが、今の凪の考え、推理でわかったことは、犯人は3組の生徒か先生の可能性大。犯人のターゲットは男でこの学校の関係者。

戦闘をしてはいけない。
もし出会ったら俺の能力を使った最善策でトドメを刺す。

このくらいだろうか?

凪との話もひと段落ついたところで、蓮や俊樹、奏や堅葵の部活も終わったらしく、全員集合して家に帰りだした。

* * *

「結局1人かー」

「いや!2人だよ!?」

みんなを家まで送り、女の子よりも男の方が危険だということを知っているから、キーに化けてもらって2人で帰っていた。

凪はみんなに本当のことを言わなかった。

言わなかったのは、多分俺たちの2人で解決をさせる気なのか、護る自信なのか、わからないけど、俺は協力をするしかないと思うだけであった。

「ねぇねぇ、教室で話してた臭いってなんなの?」

女子高生にばけているキーが女子高生のノリできいてきた。そのノリに俺は突っ込みたい気持ちを抑えつつもその質問に返事をした。

「俺もよくわかんないけど…あぁ、そうそう、こういう臭いで……!?」

俺は自分自身の鼻を疑った。

いや、誰でも疑いたくなるだろう。

話している「アノ」臭いが今まさにこの一帯に漂っているのだから。

「この臭い?!」

キーにもこの臭いが分かるようで、俺たち2人は顔を見合わせ、臭いの元を探した。

その直後だった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

となりの路地だろうか、一つの叫び声が聞こえた。

俺たちは再び顔を見合わせ、声の聞こえた方へ臭いを頼りに進んでいった。

となりの路地を覗いてみると、そこには手をカマのようにした人と、その下にさっきの叫び声の主であろう人が転がっていた。

飛び散る血…あまりの酷さに俺は嘔吐してしまいそうになるが、犯人がめのまえにいて捕まえるかもしれないという正義感でなんとか持ち堪える。

そして自分の能力を使う準備をして、犯人を捕まえようと路地の角の影に隠れて勝機を待った。

犯人に最高で最大の第1手を与えようと一歩を踏み出した。

踏み出した…までは良かった

だが、踏み出す場所が悪かった。

俺は自分の足で小石を蹴ってしまい、小さな音を立ててしまう。

霊力を使い人は普通の人よりも五感が優れているため、俺は犯人にこの音を聞かれたと瞬時に判断し、とっさに隠れた。

もう…さっきの作戦はできなくなった。

キーと目を合わせアイコンタクトで確認を取り合う。

『敵が来てる…』『うん……』

こくん、と頷いたキーは次の指示を待っているようで、決して逃げようとも、話そうともしなかった。

そうこうしているうちに、犯人はもうそこまで迫っていた。

犯人との距離は足音を聞く限り、10メートルほどあり、顔を見ようと影から顔を少しだしたが、犯人の後ろから照らされている電灯の光によって顔が見えない。

その刹那、犯人は急加速をして距離を2メートルほどにまで縮める。

俺はその犯人の踏み込みに同調するように反応し、能力で無力化にする最善策を使おうとした。

でも、それは遅かった。

犯人の速さは圧倒的で、俺の反応できない速度で、懐に大きな手のカマを振りかざした。

死を直感した俺は瞬時に目を瞑った。

だが、俺は切られてはいなかった。

雲に隠れていた月の光が照らし、俺の目には犯人の顔、犯人の目には俺の顔が映る。

犯人は…知っている人だった。

「おい…」

俺は捕まえようと手を伸ばすが、勿論届かない。

もの凄い勢いで犯人は逃げ去っていく。

「大丈夫?神威!!」

キーの声は勿論聞こえていた。

でもその言葉に反応できなかった。

「どうしてだよ…真奈…」

俺は膝をついてそれ以上は何も言えなかった。



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