「おい…見えるか?」
「いや…この辺にはいない…」
今現在、午前2時。近くの神社に来ている。
この神社は結構前から幽霊が出るというので噂が流れている。
幽霊を見たという人には 「数日間風邪で寝込んだ」 「骨折した」
など、そういう人が後を絶たない。
肝試しということで来ているのだが、ここにいる4人。 俊樹(としき)、蓮(れん)、奏(かなで)、竪葵(たつき) 俺、暁神威(あかつきかむい)を合わせて5人は、いつ怪我してもいいという状態だ。
いや…いつ死んでもいい、かな…
確かにここはやばい。
俺は生まれつき霊感はあるが、この場所はやばい…
霊は本当にいる…
多分俺以外にも少し感じている人もいるはずだ…
「神威…とりあえず、おくまで行ってみよう」
仲間の1人、俊樹がそういう。 皆乗り気で奥までいくことになったのだが俺は反対だった。
俺に霊感があるということはこの4人も知っている。
だから、俺が反対すれば少しは考えてくれるはずだ…
今、神社の鳥居のところにいる。
鳥居から階段を上がって行くと本殿が見えてくる。
その階段は周りは木に囲まれていて、とっても不気味
夜中の音は何もなく、本当に静かだ…
俺たちの声が更に響く…
声が反響して、俺たちの耳に返ってくる。
その返ってくる声は少しだけ震えている。
震えた声は、俺たちの恐怖を更に倍増させる。
誰かが大きな声を出すとたちまちパニックになり、俺たちは逃げ出してしまうに違いない…
そんな中、1つの着信音が響き渡った。
ビクッ…と俺たち全員の肩が揺れる…
「誰だよ!びっくりさせんなよな…」
震えた声…
電話の音は鳴り響いている。
無機質なこの音は誰かの携帯だろう…
「誰?早く出ろよ…」
皆が携帯を確認しだす。
音がなっていたのは、奏の携帯だった。
「私のだったみたい…」
「はぁ…びっくりさせんなよな…マナーモードとかにしとけよ…」
蓮が少し笑いながらそういう。
俺たちは少しだけ笑顔が戻り、さっきまでの緊張が少し和らいだみたいだった。
それにしてもここは怖いな… もう今日はこれくらいにして帰るか?
などと話し出した時に、奏は電話にでた。
ボソボソとあることを呟きながら…
…俺はその言葉がはっきりと聞こえた。
聞こえた。だから、その電話にでるのを俺は全力で止めようと声をあげた。
「…その電話には出るな!」
俺が大きな声を出しすぎたせいか、他の人達は少しびっくりしていた。
でもそんなことはどうでも良かったんだ。
その電話にでることだけは阻止しないといけなかった…
だが…もうそれは遅かった…
「タスケテ…」
奏の声…無機質な機械音…のように…
俺も、皆も奏を見る…固まって…動かない奏を…
「タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ」
目を白くしてそうずっとつぶやいている彼女を俺たちはただ見ていた…
どうにかしてあげたかったが、俺はどうすることもできなかった…
他の皆も同様に…
でも、数秒経つと、彼女は気絶してしまい、その場に倒れてしまった。
「奏ちゃん?ねぇ!奏ちゃん!」
気絶した奏の元に一目散に竪葵が駆け寄った。
俺はその姿を見て、我に返った。
目の前で起きたことが本当にありえないと思っていたからだ。
怖い話で俺はよく聞いていた…あの『鳴らない電話』と現象がほぼ同じだったからだ。
携帯を見る。
通話中になっていたその電話をすかさず切り、電源をオフにした。
残りの2人も鳴らない電話の話と同じだと気づいたらしく、俺たちは奏をおんぶして、近くの公園に走って向かった。
* * *
『鳴らない電話』
音がなるはずのない電話から着信があり、それに出ると呪いにかけられるという有名な話だ。
その呪いを1週間以内に解かないと、その人は死んでしまうという話…
ただの作り話だと思っていたが、今目の前で奏がその状態になっていることからすると、本当の話なのだろう…
「呪い?!そんなのどうやって解くんだよ!」
「そんなこと俺にも…」
俊樹が聞いてきたが、俺にはどうすることもできなかった。
何が原因なのかも分からないし、どうすれば呪いが解けるのかも分からない…
こんなに霊感があってもどうすることも出来ない…
無力…自分が嫌になる…
「このまま…奏は死んじゃうの?」
竪葵が涙ぐんだ声で話しかけてきた。
「いや…大丈夫だよ!必ず助かる…」
。。。何で…嘘つくんだよ…
「本当?!」
。。。いや…そんな顔をしないでくれ…
苦しい…胸が痛くなる…
無理と言ってもしょうがない…
でも、できるとしたら俺しかいないんだ…
もう俺にしか奏は救えない…
「大丈夫…どうにかしてみせる」
その言葉は半分嘘で半分本当…
いや、10割嘘だ…
助からないかもしれない…
だけど…何もしないよりかはマシだ…
「とりあえず…親に連絡して…一週間友達の家に泊まるって…」
「わかった…」
親には申し訳ないけど黙っておくしかない…
夜遊びしていて、意識が戻らないなんていうと、なんて言われるかわからない。
一週間だ…その期間の間に俺が治せればいいんだ…
治せれば………
「みんな、今日は帰ろう。奏は俺の家におぶっていくから…」
「お…おう…頼む…」
でも…賞賛なんて1つもない…
助けられるかも全くわからない…
その公園で他の3人とは別れ、奏を家までおぶって行った。
一週間の勝負が始まった。
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