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作品名:人のフリして人の不理 作者:シン

第32回   全焼
早朝、俺たちは準備をしていた。

みなみ「では、火をつけますね…」

俺たちはこの村を燃やすために、村中ににガソリンを撒いた。

白玖「待ってください…あいちゃんがまだ来てませんよ?」

俺がそう言うと、雅紀さんがすぐ反応をした。

雅紀「探しにいくか…?」

俺は彼女の本当の愛を知った。

これからは彼女と一緒に生きていこうと俺は決心した。

でも、その時俺の中でもう一度繰り返される彼女の言葉。

『ありがとう、大好きだったよ…』

白玖「過去形じゃねぇかよ…」

俺はもう走り出していた。

村の門から走って中に入っていく。

白玖「あいちゃん!!あいちゃん!!」

俺は叫んで彼女を探した。

この村に来て、生きる意味を俺に与えてくれた…

探し回っていると、村中から火がついた。

白玖「みなみさん!何で!?クッソ…」

それでも俺は探すのをやめなかった。

でも…見つからない…

白玖「あいちゃん!何処にいるの!?あいちゃん!!」

周りの火が大きくなっている中、俺はずっと声を張って探しまわっていた。

すると、あいちゃんの家の前で倒れているのを俺は見逃さなかった。

白玖「あいちゃん!!」

俺は彼女を大声で呼んだ。

あい「白玖くん…何でここに?」

もう彼女は起き上がる気力さえないみたいだった。

白玖「早く逃げないと!火が…みなみさんが勝手に…」

あい「違うの!」

彼女は俺に負けないくらいの大きな声を出して俺に伝えた。

あい「私が火はつけたの…」

火を・・・?

なんで?なんであいちゃんがつけたの?

俺は余計にわけがわからなくなってしまった。

聞こうとした時に、彼女は言った。

あい「私の罪を…自分で償おうって…」

人狼という役割を受けた自分が死ぬことによって、罪を償おうだなんて…

そんな…

白玖「なんで!?一緒に暮らそうって…言ったじゃん!一緒に行こう!」

あい「ダメなの…もう私もこの村も全部無くなる…早く行って…逃げないと白玖くんも死んじゃう…」

白玖「じゃあ…なんであいちゃんは逃げようとしないんだ…」

俺はもうどうすることもできなくなり、ただ突っ立ているだけであった。

あい「これが私の償い方なの…」

償い方…

俺はその言葉を…

白玖「それが…あいちゃんの望み…?」

彼女は頷く。いや、俺が頷いたように見えただけなのかもしれないが…

あの時、彼女が言った過去形の言葉には重い意味があった。

それがこれなんだな…

白玖「あいちゃん…別れるのは寂しいよ…」

俺は泣いていた…でも、今は笑っていようと思った。

あいちゃんがそれを望んでいるのなら俺が何かを言うこともない…

それなら少しでも楽に…

白玖「愛してる。大好きだ!」

俺の声は火が燃えている中、空気を振動し、彼女の鼓膜を震わせた。

あい「それだけ聞けてよかった…」

その後の記憶は殆ど無い…

気づいたらみなみさんと雅紀さんとバスに乗って揺られていた。

あぁ…火が見える…

なにもかもが燃えているだろう…

でも、俺は何も後悔はしていない。

だって…彼女は俺の中で永遠に生き続けているのだから…



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