「あ、そのダンボールはそこでいいですよ」
9月15日。14時半頃 俺は引っ越しを終えた。
引っ越してきた村は、住人は20人ほどしかいない。
だが自然豊かで果物や、野菜などの特産物で有名な地域だ。
「さぁ!新生活1日目!超大事だぞぉ!」
俺は張り切っていた。 なんせ初めての引っ越し、それにくわえて一人暮らし。
とっても楽しみだ。
「近所の人とかに挨拶しに行かないといけないな・・・」
俺は東京から買ってきたお土産を集会に持って行くことにした。
この村では15時になると、集会所に集まり会議を毎日開いているらしい。
なぜ毎日なのかなど、詳しいことはわからないが・・・ 多分、売れ高かや予算などの話し合いなのだろうと俺は思う。
そんなことを考えてる暇もなかった・・・
「ヤバい。もう15時になる!ダンボールからもの出してる暇ない!急がないと!!」
俺は急いで部屋を適当に片付けて部屋を出た。
* * *
集会所にはもうみんなが集まってきていた。 俺は最後に来てしまった。 最初が肝心と思っていた俺にとっては結構最悪だ。
「お・・・遅れてすいません・・・」
俺はそう言って、手に持ってる袋を置かずに、そのままお辞儀をした。
「大丈夫だよ、初めてだしね。しょうがないよ。それで、その袋はなに?」
「あ、これは東京から買ってきた御見上げでしゅ・・・」
噛んでしまった。思った以上に緊張しているみたいだ。
「噛んだね。噛んだ」
すごく恥ずかしい・・・ でも、しょうがないんだ、我慢我慢・・・
「緊張しているんだね、大丈夫だよ。それと、噛んだとか言わない、飯塚」
「へいへ〜い」
俺はいろいろな人に頭を下げながら、自分の位置についた。
席についた途端、隣の女の子から話しかけられた。
「こんにちは。初めまして、朝倉です」
「あ、初めまして、神田白玖(かんだはく)です」
無難に挨拶を返す、とってもいい人だ・・・ 少し緊張が和らいだ気がする。
でもうまく話せているだろうか?
そう思うと俺はなんだか恥ずかしくなった。
今日の会議は難しい内容だった。
りんごの出荷が二時間遅れた。資金が三億余った。他に使用。 あと何日でぶどうの出荷。出荷の時間と予算の確定・・・
など、とんでもなく難しかった・・・
初めての俺は全く意味がわからなかった。
それにしても、一日でとてつもない金が動くんだな・・・
そんなことを思っていた。
今日の会議は終わり、俺はみんなに挨拶をしようとお土産を持って行くことにした。
「初めまして、神田白玖です」
このセリフを何回言っただろうか・・・? 人数は少なかったが、全員一人ひとりに挨拶をしたから疲れた・・・
現在この村には俺を含めて17人の住民がいる。
流石に全員の名前を覚えるのは大変だ・・・
でも、最初に話しかけてくれた朝倉あい(あさくらあい)ちゃんはすぐに覚えた。
とっても頭が冴えていると思った・・・なんか・・・そんな感じだ。
そして、俺に「噛んだ噛んだ」と言ってきた、飯塚悟志(いいずかさとし)さん。
あの人はなんか怖かった。現代の若者という感じがした。
それと村長の荒木俊介(あらきしゅんすけ)さん。俺と同じくらいの若さなのに村長をしている。
すごい正義感だと思う。俺にそんなことはできない。
初日、来てからすぐに覚えれた人はたったの3人・・・ 俺の頭脳の低さを表している数だと思う。
引っ越してきて、数時間しか経ってないけど、これからの毎日が楽しみだ。
俺はそんなことを思いながら、ダンボールからものを出していた。
・・・何時間作業をしていたのだろうか?
ものがたくさんありすぎて、大変だ・・・
「よし。全部終わったかな・・・」
俺がその言葉を使い、時計を見るとその時計は2時を指していた。
「うわぁ!こんな時間まで作業していたのか!?」
一心不乱に作業をしていた俺はシャワーを浴び、布団へと一目散に入った。
明日の予定を確認しながら俺は眠りについた。
これから始まる生活の本当の意味を悟らずに・・・
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